
起立性調節障害とは何か?
「起立性調節障害」は、自律神経の働きが乱れて、立ち上がる・起きるという身体動作の際に血圧や心拍数がうまく調整できず、さまざまな体調不良が起こる疾患です。起立性という名の通り、起き上がると症状が出やすく、特に朝に悪化しやすいのが特徴です。
主な症状
- 朝起きるのがつらい/起床困難
- 立ちくらみ、めまい、動悸
- 頭痛、腹痛、倦怠感
- 遅寝・不眠、日中の眠気や仮眠
- 集中力の低下、学業不振
- 食欲不振、乗り物酔い
これらは「見た目」ではわかりにくく、「怠けているだけじゃないの?」と言われて傷つく若者も多くいます。
なぜ若者に多発しているの?
近年の小中学生・高校生に増えている背景には、大きく分けて以下の要因があります。
生活習慣の変化
スマホ、パソコン、ゲーム機などIT機器の長時間使用――座りっぱなしの生活、運動不足、夜更かし。これらが「自律神経失調」の大きな要因になっています。
ストレスと教育環境
受験勉強、成績や友人関係へのプレッシャー、不登校への悩みなど、現代社会のストレス環境は子どもにも大きな負担です。真面目な性格や周りへの気配りができる子ほど、ストレスを抱えがちとも言われます。
家庭環境や親子関係
家庭内でも、親の期待・進路へのプレッシャーなどが自律神経に影響します。家庭に安らぎがないと、体調が回復しにくくなります。
睡眠不足
SNS・ネット利用で夜更かし習慣が広まり、睡眠時間と質が低下。これも自律神経のリズムを乱し、起立性調節障害が増える一因となっています。
年齢・性別・季節の特徴
起立性調節障害は、「10~16歳の思春期世代」がピーク。とくに中学生で発症率が跳ね上がり、男子より女子が1.5~2倍多いというデータがあります。
春~秋、新学年・新生活といった環境変化が起こる時期に症状が強くなりやすい傾向も報告されています。
症状のパターンと生活への影響
午前中、特に起床時に強く症状が出ることが多く、「夜は元気なのに朝になるとダメ」「午後には体調が戻る」など、一日の中でも体調変化が大きいのが特徴です。
不登校の子どもの約30~40%がこの障害を持つとも言われ、学習意欲や記憶力の低下、学力不振にもつながります。家族や先生から理解が得られず、苦しみが深まるケースも多く報道されています。
起立性調節障害になりやすい人は?
- 真面目で周囲に気を配るタイプ
- 親も同じ症状があった人(遺伝)
- 10~16歳の女性
- 中学生
これに該当していて、最近「朝の体調不良」や「学校に行きづらさ」が目立つ場合は、早めに医療機関へ相談してください。
どんな対応ができる?予防や対策は?
日常生活でできること
- 急に立ち上がらず、数秒深呼吸してから動く
- 規則正しい生活(起床・就寝時間を早める)
- 朝食を必ず摂取する
- 水分1.5~2リットル・塩分多めの摂取
- 適度な運動(午後の軽い散歩、ストレッチ等)
- 体調が悪い日は無理せず、予定に余裕をもつ
家族・学校・社会ができること
若者自身も、「一人で抱え込まない」「家族や先生に相談する」ことが大切です。医療機関では、自律神経の調整を促す薬物療法、心理・カウンセリングなどを組み合わせた専門治療が受けられます。
今つらいあなたへ――当事者に伝えたいこと
「甘えだ」と言われて悩む方が本当に多いです。しかし起立性調節障害は、脳や自律神経の機能不全による正真正銘の「身体疾患」です。恥ずかしがらず、周囲に伝えてください。あなたのつらさは、医療・社会がきちんと受け止め、適切な治療やサポートが受けられるものです。
成長とともに自然に改善するケースは多いですが、我慢せず、医療機関や保健室、学校の先生や保護者へ率直に話してみましょう。
おわりに
起立性調節障害は、現代の若者が直面する新しい「体と心の課題」。理解が広がることで、一人でも多くの若者とご家族が「自分らしく」無理せず生きていける社会を目指しましょう。この記事が、悩む人と周囲の方の手助けとなれば幸いです。
もしご自身やご家族、友人に思い当たる症状があれば、勇気を持って相談してみてください。あなたの「つらさ」は、必ず理解され、支えられるものです。
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