
みなさんは「デジタル終活」という言葉を聞いたことがありますか?
近年、終活という言葉はすっかり身近になりました。生前から自分の持ち物や財産、葬儀の準備などを整理する「終活」は、多くの人が取り組むテーマになっています。
しかし、スマホやパソコン、SNSやネットサービスが私たちの生活に深く根付いた今、見過ごせないのが「デジタル終活」です。これは、自分が亡くなった後に残される「デジタル資産」を整理し、家族や遺族に余計な負担をかけないようにする取り組みのことを指します。
ちょっと考えてみてください。あなたのスマホやパソコンには、誰にも見られたくないデータや、銀行口座情報、SNSのアカウント、サブスクの契約などが眠っていませんか?もし突然自分がいなくなったら、それらを家族がどう扱えばいいか、きっと困ってしまうはずです。
デジタル遺品とは何か?
デジタル終活の対象となるものを、具体的に見てみましょう。これを「デジタル遺品」と呼びます。代表的なものは以下です。
- スマホ・PC内のデータ(写真、動画、連絡先、メールなど)
- SNSアカウント(Facebook、Instagram、X〈旧Twitter〉、LINEなど)
- ネット銀行・証券口座(ID・パスワードがなければ遺族が凍結解除できないことも)
- クラウドサービス(Google Drive、iCloudなどに保存しているファイル)
- サブスクリプション契約(動画配信サービス、音楽サービスなど自動引き落としが続く場合)
- ネットショップのID情報(Amazon、楽天など購入履歴やポイントが残る)
これらは物理的な遺品とは違って、目に見えないからこそ放置されがちです。ところが放っておくと、遺族が利用停止の連絡に苦労したり、自動引き落としが延々と続いたり、時にはパスワードを巡ってトラブルになってしまうケースすらあるのです。
なぜデジタル終活が必要なのか?
「まだ若いから大丈夫」と思う方もいるでしょう。しかし、事故や病気は突然やってきます。デジタル終活をしておくことで、こんなメリットがあります。
- 遺族が困らない:各種サービスのIDやパスワードが整理されていると手続きがスムーズ。
- 無駄な費用を防げる:使わないサービスの自動引き落としを止められる。
- プライバシーを守れる:見られたくない写真やメッセージを生前に削除しておける。
- 財産をきちんと相続できる:ネット証券や暗号資産なども「資産」として換金可能になる。
家族にとっても、自分にとっても安心材料となるのがデジタル終活です。

デジタル終活の始め方
では、どうやって始めればいいのでしょうか。方法は意外とシンプルです。
- デジタル資産をリスト化する
→ スマホ、PC、SNS、ネット銀行、サブスクなど、自分が使っているサービスを紙やエクセルに一覧でまとめる。 - ID・パスワードを整理する
→ すべて覚えておくのは不可能なので、パスワード管理アプリや紙のエンディングノートに書いて保管する。 - 不要なデータを削除する
→ 見られたくない写真やメッセージは早めに整理。クラウド内も確認しておく。 - エンディングノートや遺言に記載する
→ アナログでも良いので「このフォルダを見てほしい」「パスワードは金庫にある」など、家族に分かる形で残す。 - 定期的にアップデートする
→ 新しいサービスや契約をしたら、忘れずにリストに追加する。
デジタル終活に役立つサービス
最近は便利なサービスも増えてきました。
- 終活アプリ:スマホでパスワードやアカウント情報を安全に保存できる。
- デジタル遺言サービス:弁護士や専門家を通じて、死後にデータを整理してもらえる仕組み。
- クラウド終活ノート:インターネット上にエンディングノートを残せるサービス。
こうした仕組みを使えば、負担をぐっと減らすことができます。
まとめ:あなたも今日から始められる
「デジタル終活」は、決して特別な人だけのものではありません。スマホを持っている人、SNSを利用している人、オンラインで銀行や買い物をしている人なら、もう誰にとっても関係のあるテーマです。
大切なのは「まだ大丈夫」と先送りにせず、少しずつ整理を始めることです。まずは、自分が使っているデジタルサービスを紙に書き出してみる――これだけでも、立派な第一歩です。
人生の終わりを考えることは決して暗いことではなく、残された家族を思いやる優しさの一つ。あなたも今日から「デジタル終活」について考えてみませんか?
デジタル終活をしなかった場合のトラブル事例
「自分には関係ない」「まだ大丈夫」と思って準備をしないと、実際にこんなトラブルが起こる可能性があります。実際のニュースや報道された事例をもとに、代表的なケースを見てみましょう。
事例1:SNSアカウントが放置され、遺族が悲しみに苦しんだケース
ある40代男性が突然亡くなった後、FacebookやInstagramのアカウントがそのまま残ってしまいました。誕生日になると自動的に「お祝いメッセージ」が届き続け、遺族にとっては悲しみを思い出すつらいきっかけとなってしまったのです。
もし事前にログイン情報や削除方法を残しておけば、遺族が「追悼アカウント」に移行したり、削除の申し出をすることができました。
事例2:ネット銀行口座の存在に気づかず、資産が眠ったままに
高齢の方がネット銀行やネット証券を利用していたものの、家族に伝えていなかったため、数百万円もの資産がそのままになってしまった事例も。
法的には請求できる資産ですが、IDやパスワードが不明では手続きに時間と労力がかかり、最悪の場合は「家族が存在に気づかないまま放置」されるリスクもあります。
事例3:サブスク契約が自動引き落としされ続けた
音楽配信サービスや動画サービスの定額契約を多数抱えていた方が亡くなったケースでは、毎月数千円の引き落としが何カ月も続いてしまいました。契約情報が不明のままでは解約できず、家族の金銭的負担につながってしまいます。
事例4:遺族がパソコンを開けず重要資料が確認できなかった
会社を経営していた方が急逝した際、取引先との契約書や請求書データがすべてパソコンに保存されていました。しかしログインパスワードが分からず、仕事の引き継ぎが大きく滞ってしまったという事例も実際に報道されています。
最後に
「デジタル終活」と聞くと難しくて面倒な印象があるかもしれません。でも実際には「ちょっとしたメモを残す」「不要な契約を見直す」ことから始められます。
あなたの大切な人が安心できるように、そして自分の人生をきれいに締めくくるために、今日から”小さな一歩”を踏み出してみませんか?
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