
「バセドウ病を患っている」と語った立川志らくさんのニュースは、多くの人に驚きを与えました。
テレビの中ではいつも元気で歯切れのよいコメントをしていた志らくさん。その姿からは、病気とは無縁に見えた方も多いでしょう。
しかし、バセドウ病というのは見た目ではわかりにくく、気づかないうちに心身をむしばむ自己免疫疾患です。今回は、志らくさんの例をきっかけに、この病気について一緒にじっくり学んでいきましょう。
バセドウ病とはどんな病気?
バセドウ病とは「甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気」です。
甲状腺は首の前側にある小さな臓器で、身体のエネルギー代謝をコントロールする大切なホルモンを作っています。ところが、この働きが暴走してしまうと、体の新陳代謝が異常に活発になってしまいます。
その結果、体重が減ったり、動悸や息切れがしたり、イライラが止まらなくなったりといった症状が現れるのです。
つまり、体の「アクセル」が踏みっぱなしになるような状態といえます。
バセドウ病の主な原因
バセドウ病の原因は、自己免疫の異常です。
自分の体を守るはずの免疫が、なぜか甲状腺を攻撃してしまうのです。このとき、「TSH受容体抗体(TRAb)」という抗体が甲状腺を刺激し、ホルモンを過剰につくらせます。
医師でもなぜ免疫が誤作動するのか、完全には解明されていませんが、いくつかの要因が知られています。
- 遺伝的な体質(家族に甲状腺疾患がある場合)
- 強いストレス
- 出産やホルモンバランスの変化
- 喫煙
- ウイルス感染
志らくさんのように多忙で神経を使う職業の方は、強いストレスが重なりやすく、自律神経やホルモンのバランスが乱れやすいのです。
バセドウ病で起こる主な症状
バセドウ病は、体だけでなく心にも影響する病気です。代表的な症状を見ていきましょう。
体の症状
- 動悸が激しくなる
- 暑がりになる、汗をかきやすい
- 体重が減る(食欲はあるのに痩せる)
- 手の震え
- だるさや筋力低下
- 首の腫れ(甲状腺の腫大)
心の症状
- イライラしやすい
- 不安や焦燥感
- 不眠
- 注意力の低下
バセドウ病の恐ろしさは、こうした症状が一見「更年期」「不安神経症」「疲労」などと勘違いされやすいことです。志らくさんも初めはそのように感じていたかもしれません。
「目の症状」にも注意
バセドウ病の一部の患者には「甲状腺眼症」と呼ばれる目のトラブルが起こります。
これは、目の奥の組織が炎症を起こすことで、まぶたが腫れたり、眼球が突出して見える症状です。
テレビなどで目の印象が変わった芸能人を見ると、「疲れているのかな?」と思うことがありますが、実はこの病気が隠れていることもあります。
診断方法と検査
病院では、以下のような検査で診断を行います。
- 血液検査:甲状腺ホルモン(T3・T4)、TSH、TRAbの値を測定。
- 触診:甲状腺の腫れや結節の有無を確認。
- エコー検査:甲状腺の状態を画像で確認。
- 心電図:動悸や脈拍異常の有無をチェック。
もし最近、動悸・体重減少・手の震えなどが続く方は、内科や内分泌専門の病院で一度検査してもらうのがおすすめです。
バセドウ病の治療法
治療には大きく分けて3つの方法があります。
1. 薬物療法(抗甲状腺薬)
最も一般的な治療法です。
メルカゾール(MMI)やプロパジール(PTU)という薬で、甲状腺ホルモンの合成を抑えます。
副作用としては肝機能障害や発疹が現れることがありますが、多くの人は内服でホルモン値が安定し、徐々に回復していきます。
2. 放射性ヨウ素治療
放射性ヨウ素を体内に取り込み、甲状腺細胞を部分的に破壊してホルモンを減らす方法です。
海外では標準的な治療で、日本でも希望する人が増えています。
3. 手術
薬でもコントロールできない場合や甲状腺が極端に大きい場合には、外科手術で甲状腺の一部を切除します。
志らくさんも医師の指導のもと、これらの治療法のいずれかを行っていると考えられます。
治療中に気をつける生活習慣
症状を安定させるためには、日常生活でもいくつかのポイントがあります。
- 睡眠をしっかり取る
- ストレスをためない
- タバコを控える
- 過度な運動や飲酒を避ける
- ヨウ素を含む食品(昆布・わかめなど)を摂りすぎない
特にストレス対策は重要です。
志らくさんのように毎日多くの人と関わる方ほど、自分の時間を大切にすることが病気の回復の助けになります。
志らくさんのメッセージから学べること
志らくさんが病気を隠さず公表したことは、多くのファンに勇気を与えました。
有名人がこうした病気を語ることで、「自分も疲れているだけじゃないかも」「一度検査してみよう」と思う人が増えるのは、とても大切なことです。
病気は誰にでも起こりえます。大切なのは、早く気づき、適切に治療すること。
「病気を受け入れる」という姿勢こそ、志らくさんが見せてくれた強さではないでしょうか。
バセドウ病は治るのか?
きちんと治療を続ければ、バセドウ病はコントロールできます。
多くの人が数年で薬を減量または中止でき、普段どおりの生活に戻っています。
ただし、再発することもあるため、定期的な血液検査や医師のフォローが欠かせません。
「もう大丈夫」と自己判断せず、医師と二人三脚で長く向き合うことが回復へのカギとなります。
まとめ:心と体のバランスを取り戻そう
バセドウ病は「心と体のアクセルが離れない」病気。
でも、正しい治療と生活ケアで、再び穏やかなリズムを取り戻すことができます。
立川志らくさんのように、自分の体と真摯に向き合うことが、最も大切な一歩です。
疲れや不調を感じたら、無理せず一度立ち止まりましょう。
あなたの体は、いつでも「助けて」とサインを出しています。
その声に、耳を傾けてあげてください。

コメント