年金制度は破綻するのでしょうか?
年金制度の現状
日本の年金制度は、現役世代が厚生年金や国民年金の保険料を納付し、その資金が現在の年金受給者に支給されるという仕組みです。しかし、現在の年金保険料の納付と給付の実態、将来的な給付の見通しについて調べると、日本の年金制度の維持をしていくためには、現役世代がどうしても増える負担を支えなければならない状況にあることが分かります。
政府の対策
令和4年4月から、年金制度が改正されました。主な改正点は以下の通りです。
1. 繰下げ受給の上限年齢引上げ
老齢年金の繰下げの年齢について、上限が70歳から75歳に引き上げられました。また、65歳に達した日後に受給権を取得した場合についても、繰下げの上限が5年から10年に引き上げられました。
2. 繰上げ受給の減額率の見直し
繰上げ受給をした場合の減額率が、1月あたり0.5%から0.4%に変更されました。
3. 在職老齢年金制度の見直し
在職中の老齢厚生年金受給者について、年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計額が一定の基準を超えたとき、年金の全部または一部が支給停止されます。
個々の対策
年金制度に対して取り組むべき具体的な対策について説明します。
1.資産形成
年金だけでは老後の生活を支えるのは難しいため、早いうちから資産形成を始めることが重要です。資産形成の方法としては、預貯金だけでなく、株式や投資信託といった手段もあります。これらは欧米では多くの一般家庭で行われています。
2.iDeCoや積立NISAへの加入
国が税制優遇を設けている個人型確定拠出年金(iDeCo)や少額投資非課税制度(NISA)に加入することもおすすめです。これらは、初心者向けであり、年金対策に適した商品となります。
3.FP相談
資産形成にはリスクが伴うため、不安を感じる方はファイナンシャルプランナー(FP)に相談することをおすすめします。FPはお金のプロであり、資産形成についてアドバイスを提供します。
4.年金保険料の納付
年金保険料を納めることにはメリットがあります。年金は、現役世代が、今の60歳以上の受給世代を扶養する「世代間扶養」という仕組みで成り立っている社会保障制度です。そのため、本来は世代の差について、損得を考えるものではないと言えます。
以上のような対策を早めに始めることで、将来の年金制度の変動に対応することが可能となります。年金制度の未来は不確定ですが、自身の未来は自分でコントロールできます。早めの対策をお勧めします。
2025年の見直しに向けて
年金制度の改革に向けた議論は、5年ごとに見直す年金制度の次の改革は2025年に向けて進行中です。主要テーマは保険料の納付期間の延長、厚生年金から国民年金への「補填」や国庫負担増などが挙げられています。
具体的な改革案としては、以下の3つが検討されています。
1.保険料の納付期間の延長
現行の40年から45年に5年延ばす案が従来から議論されてきました。
2. 厚生年金から国民年金への「補填」
財政力の強い厚生年金と財政力の弱い国民年金との間の調整が考えられています。
3.厚生年金などに加入する短時間労働者らの対象拡大
企業規模の要件が22年10月から「101人以上」に引き下げられたが、さらに引き下げ、最終的に要件を撤廃する方向で検討を進める見通しです。
以上のように、年金制度の改革は現在も進行中で、今後の動向に注目が集まっています。
日本の年金制度と他国の年金制度を比較
オランダ
オランダの年金制度は、世界で最も評価されています。オランダの年金制度は「持続性」が高く評価されており、年金制度と国民の生活が維持できるかという観点において、高いスコアが付けられています。また、過去11年のうち10年で1位もしくは2位に輝いています。
アメリカ
アメリカでは、すべての人が年金制度に加入する必要はありません。年金制度の加入対象は、会社などで雇われている人や一定の所得のある人のみです。
イギリス
イギリスでも、すべての人が年金制度に加入する必要はありません。雇用者、自営業者とも、所得により加入義務があります。
ドイツ
ドイツでは、雇用者は年金制度に加入する必要がありますが、自営業者は職種により、無職の人は一部の人に加入義務があります。
オーストラリア
オーストラリアの年金には、老齢年金 (AP)と退職年金保障制度 (SG)があります。老齢年金 (AP)は原則、すべての人が加入しますが、退職年金保障制度 (SG)は一部の雇用者のみが加入します。
以上のように、各国の年金制度はそれぞれ特徴があり、日本の年金制度とは異なる点が多く見られます。これらの情報を踏まえて、日本の年金制度の改革について考えることは重要です。
まとめ
日本の年金制度は、「3階建て」の構造を持っています。1・2階部分の公的年金が国民の老後生活の基本を支え、3階部分の企業年金・個人年金と合わせて老後生活の多様なニーズに対応しています。
公的年金には、国民全員が加入する「国民年金」(1階)と、会社員や公務員などが加入する「厚生年金」(2階)があります¹。私的年金(3階)には、企業年金や個人年金(iDeCo)などがあります。
しかし、現在の年金制度にはいくつかの課題があります。厚生年金や国民年金の保険料を納付している現役世代の中には、自分たちが将来年金を受給できないのではという不安や、しわ寄せを一方的に受ける印象に対する不満が存在します。
また、令和4年4月から年金制度が改正され、いくつかの変更が行われました。例えば、老齢年金の繰下げの年齢の上限が70歳から75歳に引き上げられ、繰上げ受給をした場合の減額率が、1月あたり0.5%から0.4%に変更されました。また、60歳以上65歳未満の方の在職老齢年金について、年金の支給が停止される基準が見直され、65歳以上の在職老齢年金と同じ基準(28万円から47万円)に緩和されました。
これらの改正は、人生100年時代とも言われる長寿時代の老後を強力に支える内容で、制度を理解し賢く使いこなすかどうかで将来の不安や、シニア期の経済的な余裕に大きな差が出ると考えられます。年金制度の詳細や最新の情報については、厚生労働省のウェブサイトや日本年金機構のウェブサイトをご覧いただくことをお勧めします。
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