
こんにちは。今日は、ニュースでも話題になっている「日本郵便がフリーランス法(特定受託事業者保護法)に違反している疑い」について、わかりやすく掘り下げていきます。
最近、「フリーランス保護新法」という言葉を耳にしたことはありませんか?2024年に施行されたばかりの新しい法律で、企業と個人事業主――つまり“雇われない働き方”を選んだ人たちの間に、新しいルールを定めたものです。
今回の日本郵便の件は、その新ルールの「初めての大きな試験事例」とも言われています。
そもそも「フリーランス法」ってなに?
正式名称は 「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」。これは長いですね。通称「フリーランス保護新法」または「フリーランス法」と呼ばれます。
この法律は、簡単に言うと「会社がフリーランスと取引する際に、不当な契約条件や一方的な扱いをしてはいけない」というルールを作ったものです。
これまでフリーランスは、労働基準法の保護も受けられず、下請け法の適用外になることも多く、“労働者でもなく経営者でもない”宙ぶらりんな立場でした。
そのため、次のようなトラブルが多発していたのです。
- 業務完了後に「報酬を下げられる」
- 契約書を交わさず口約束だけで仕事を振られる
- 一方的に仕事を打ち切られる
- 報酬の支払いが遅い、もしくは未払い
- フリーランスに対して「社員のような働き方」を強要する
こうした不当な扱いを防ぐために、政府は2024年11月からフリーランス法を施行しました。
なぜ「日本郵便」が問題になったのか?
では、なぜあの国の大手企業「日本郵便」がフリーランス法違反の疑いをかけられているのでしょうか?
背景には、日本郵便が配達業務の一部を業務委託化している仕組みがあります。全国の郵便局では「委託配達員」や「業務委託配達パートナー」などの形で、自営業者が荷物を届けるケースが増えています。
一見すると“個人事業主”に見えるこの形態ですが、実際には次のような実態が指摘されていました。
- 指示内容や勤務時間、ルートを細かく指定されている
- 制服の着用や営業所への出退勤義務がある
- 休暇取得や勤務状況まで会社が管理している
- 報酬の単価を一方的に変更される
つまり、「実質的には社員のように働いているのに、契約上はフリーランス」という状態です。
これがフリーランス法で定める「優越的地位の濫用」「取引の不当拘束」に当たるのではないか、と見られているのです。
フリーランス法が禁止していること
フリーランス法では、企業がフリーランスに対して行ってはいけないことを明確に定義しています。主な禁止事項は以下のとおりです。
- 不当な契約解除
→ 業務途中で一方的に契約を打ち切る行為。 - 報酬の減額・未払い
→ 納品後に勝手に支払い額を変更したり、支払いを遅延する行為。 - 優越的地位の濫用
→ 取引上の立場を利用して、不利な条件を押し付ける行為。 - ハラスメント・不当な要求
→ 不合理な指示、長時間労働の強要、人格的な圧力など。 - 契約書面(電子データ)の未交付
→ 契約内容を文書で提示せず、口頭やLINEだけで仕事を頼む。
さらに、報酬の支払期日は納品後60日以内と定められています(第8条)。
つまり、フリーランスが請求しても2か月以上支払いがない場合、企業側に法的責任が発生します。
日本郵便のケースは「偽装フリーランス」?
今回の疑いで注目されているのが、「偽装フリーランス(偽装業務委託)」の問題です。
これは、形式上は「業務委託契約」に見えても、実態は「雇用」と変わらないケースを指します。たとえば、
- 仕事の指示系統が完全に会社側にある
- 勤務時間や休日を自由に選べない
- 自分で業務内容や方法を決定できない
- 他のクライアントを自由に取れない
こうした状況では、「名ばかり個人事業主」になってしまいます。会社側は社会保険料や雇用保険の支払いを免れ、責任を回避できる一方、従業者は労基法による保護を失う——その格差が、問題視されているのです。
もし日本郵便の委託配達員がこうした条件に該当する場合、フリーランス法だけでなく労働基準法違反に問われる可能性も出てきます。
政府の動きと今後の焦点
フリーランス法の所管は、公正取引委員会・厚生労働省・中小企業庁の3機関。
今回の日本郵便の件では、これらの機関が合同で調査に乗り出す見通しです。
注目すべきは、これが初の大企業への適用事例になる可能性が高い点です。
これまでは映像制作・ライター・エンジニアなど、個別の業界での事例が中心でした。しかし、日本郵便のような“社会インフラ級”企業には大きな波及効果があります。
調査結果次第では、他業界の「 Uber Eats 配達員」や「宅配委託ドライバー」などにも法の解釈が及ぶ可能性があります。
フリーランス本人が知っておくべきポイント
このニュースは「日本郵便」だけの話ではありません。あなたが個人事業主としてどこかから業務を請けているなら、他人事ではないのです。
自分を守るために、ぜひ次のチェックポイントを意識してみてください。
- 契約書は 必ず書面または電子文書で交わす。
- 報酬の支払期日を明確にしておく。
- 納品後に単価変更された場合は拒否または通報可能。
- 過度な拘束(勤務時間や専属契約)は法的に問題になる。
- 不当な扱いを受けた場合はフリーランス110番・公取委相談窓口へ。
こうした基本的なルールを知っているだけでも、トラブルを未然に防ぎやすくなります。
フリーランス法違反で処罰されるとどうなる?
フリーランス法はまだ新しいため、「罰則はどうなるの?」という声も多いです。
実際には、違反行為が確認された場合、以下の流れで企業が責任を問われます。
- 是正勧告(行政指導)
- 勧告の不履行に対しての社名公表
- 悪質なケースでは刑事罰の可能性
たとえば、報酬の支払いを怠った場合や虚偽の契約内容を提出した場合は、50万円以下の罰金の対象になります(第19条)。
企業にとっては金額以上に「社会的信用の失墜」が最大のダメージです。
特に公的機関である日本郵便にとって、法令違反の印象は大打撃になります。
フリーランスに追い風?それとも警鐘?
今回の事件の意味をもう少し広い視点で見てみましょう。
日本社会ではここ数年、「副業」や「クラウドワークス」「ランサーズ」などの登場で、フリーランス人口が急増しています。
総務省の推計では、すでに約470万人がフリーランスとして働いていると言われています。
一方で、「自己責任社会」の中で泣き寝入りする例も少なくありません。
フリーランス法は、そんな時代に“企業との契約のフェアネス”を保つための重要な一歩です。
ただし、「保護されるから安心」と思うのは危険。
フリーランス法の適用には条件があり、「事業として独立している」ことが前提です。
つまり、企業への依存が高いほど、法律上の保護を受けにくくなります。
「報酬の単価交渉」「他社取引の自由」「契約内容への理解」
これらを意識的に管理できる人こそ、強いフリーランスと言えるでしょう。
まとめ:ルールを知ることが最大の防御
日本郵便のフリーランス法違反疑惑は、単なる一企業の問題にとどまりません。
「働き方の多様化」が進む中で、個人と企業の関係をどう守るのか――
これが今まさに、日本社会全体が試されているテーマなのです。
これからフリーランスとして活動する人、または企業として外注を活用する人。
どちらにとっても、「契約の透明性」と「報酬の公平さ」は避けて通れない課題です。
今回のニュースをきっかけに、自分の働き方・契約のあり方を一度見直してみてはいかがでしょうか?

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