
現在、老健(介護老人保健施設)に入所しているご家族が、介護認定の見直しによって要介護1から要介護5へ変更された場合、「特養(特別養護老人ホーム)へ移れるのか」「誰に相談すればよいのか」と悩まれる方は少なくありません。
結論から申し上げると、要介護5であれば特養の入所対象に該当し、申し込み・入所の可能性は十分にあります。ただし、特養は待機者が多く、すぐに入れるとは限らないため、正しい相談先と手順を理解して動くことが重要です。
本記事では、老健から特養への移行を検討する際の相談先、具体的な手続き、注意点までを丁寧に解説します。
老健と特養の違いをまず整理する
制度を正しく理解することが、適切な判断への第一歩です。
老健と特養は同じ「介護施設」でも役割が大きく異なります。
- 老健:在宅復帰を目的とした中間施設(リハビリ中心)
- 特養:長期入所を前提とした生活施設(終身利用に近い)
老健はあくまで「一時的な施設」であり、原則として在宅復帰を目指します。そのため、長期入所には向いていません。一方、特養は常時介護が必要な方の生活の場として設計されています。
今回のように要介護5となった場合、在宅復帰が難しい状態と判断されやすく、特養の対象として優先度が高くなる傾向があります。
特養に入所できる条件
特養の入所には明確な条件があります。
- 原則として要介護3以上
- 常時介護が必要で在宅生活が困難
- 医療依存度が極端に高くない(施設対応可能な範囲)
今回のケースでは要介護5ですので、条件は満たしています。
ただし、実際の入所は「要介護度」だけで決まるわけではなく、以下のような事情も考慮されます。
- 家族の介護力(同居・遠方など)
- 認知症の程度
- 緊急性(介護放棄・虐待リスクなど)
- 現在の生活環境
つまり、申し込めば必ずすぐ入れる制度ではなく、待機順位がつく仕組みです。
誰に相談すべきか?結論は「複数同時進行」
質問の核心である「誰に相談すべきか」については、次の3つが重要です。
現在入所中の老健の相談員(最優先)
まず最初に相談すべきは、現在入所している老健の支援相談員(ソーシャルワーカー)です。
理由は明確で、
- 状態を最もよく把握している
- 施設間の紹介ルートを持っている
- 退所後の行き先調整が業務に含まれている
老健側から「要介護5への再認定」を勧められたという点からも、すでに特養移行を視野に入れている可能性が高いと考えられます。
遠慮する必要はありません。むしろ、以下のように具体的に伝えるとスムーズです。
「今後は特養への入所を検討しています。どのように進めればよいでしょうか」
ケアマネジャー(担当がいる場合)
在宅時からのケアマネがいる場合、または施設ケアマネがついている場合は、その方にも相談します。
ケアマネは、
- 施設情報に詳しい
- 申込書類の作成をサポートできる
- 家族状況を踏まえた優先度の整理ができる
という役割があります。
自分で特養を探して申し込む(必須)
ここが重要なポイントです。
特養は「自動的に移れる」仕組みではありません。必ず自分で申し込みが必要です。
そのため、
- 自宅近くの特養
- 現在の老健の近隣施設
- 評判や空き状況が比較的良い施設
などを複数選び、同時に申し込むことが基本戦略になります。
特養入所までの具体的な流れ
実際の流れは次のようになります。
- 老健相談員へ意向を伝える
- 特養の候補を複数選定
- 各施設へ見学・問い合わせ
- 入所申込書を提出
- 待機リストに登録
- 空きが出たら面談・判定
- 入所決定
ポイントは、1施設だけでなく複数申し込むことです。
地域によっては、1年以上待つケースも珍しくありません。
注意すべき現実的なポイント
理想だけで動くと失敗しやすいため、現実的な点も押さえておきます。
待機期間は長い
都市部では数十人〜100人以上待ちもあります。
すぐ退所を求められる可能性
老健は長期滞在前提ではないため、特養が決まる前に退所調整が入ることもあります。
医療依存度の確認
胃ろう・点滴・頻回吸引などがある場合、受け入れ可能な特養が限られます。
スムーズに進めるためのコツ
実務的に重要なポイントを整理します。
- 老健相談員とは密に連携する
- 申し込みは最低3〜5施設
- 見学は必ず行う
- 家族状況は正直に伝える(優先度に影響)
- 緊急性がある場合は明確に伝える
特に、「家族が介護できない状況」は優先順位に影響しますので、遠慮せず伝えることが重要です。
よくある誤解
最後に、よくある誤解を整理しておきます。
- 老健にいれば自動的に特養に移れる → 誤り
- 要介護5ならすぐ入れる → 誤り
- 施設が全部手配してくれる → 半分誤り
正しくは、施設と家族が協力して進めるものです。
まとめに代えて
今回のケースでは、
- 要介護5になっているため特養入所資格は十分
- 最初の相談先は老健の相談員
- 同時に自分でも複数の特養へ申し込みが必要
というのが最も現実的で確実な進め方です。
介護施設の選択は、今後の生活の質に直結します。焦らず、しかし後回しにせず、早めに動き出すことが重要です。


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