
法テラス(日本司法支援センター)は、2006年に設立された独立行政法人で、低所得者向けに無料法律相談や弁護士・司法書士費用の立替を提供します。この制度は「民事法律扶助」と呼ばれ、離婚、相続、借金、労働争議などの民事トラブルを対象としています。
着手条件とは、法テラスが費用を立て替えるための審査基準で、主に3つあります。これらを満たさないと利用できませんが、基準は家族構成や地域で細かく定められています。正確に理解することで、無駄な申請を避け、スムーズに支援を受けられます。
着手条件1:資力基準(収入と資産)
法テラスの最も重要な着手条件が「資力基準」です。これは、月収(収入要件)と預貯金などの資産が一定額以下であることを意味します。基準は世帯人数と居住地域(大都市かそれ以外か)で異なり、2026年現在も基本的に以下の表の通りです。なお、収入は手取り月収+賞与の年収換算、資産は本人と配偶者の現金・預貯金合計です。
| 世帯人数 | 収入基準(大都市) | 収入基準(その他地域) | 資産基準(全国共通) |
|---|---|---|---|
| 1人 | 200,200円以下 | 182,000円以下 | 180万円以下 |
| 2人 | 276,100円以下 | 251,000円以下 | 250万円以下 |
| 3人 | 299,200円以下 | 272,000円以下 | 270万円以下 |
| 4人 | 328,900円以下 | 299,000円以下 | 300万円以下 |
例えば、単身者が東京で月収20万円の場合、基準を超えるため利用不可となります。一方、パート収入中心の2人世帯で月収25万円以下なら可能性があります。年金受給者や失業者も対象になりやすく、扶養家族が多いほど基準が緩やかです。資産には車や不動産は含まれませんが、生活必需品は除外されます。ご自身の状況を事前に計算し、必要書類(課税証明書、給与明細、通帳コピー)を準備してください。
着手条件2:勝訴の見込みがないとはいえないこと
資力基準をクリアしても、依頼内容に「勝訴の見込みがないとはいえない」ことが必要です。これは、弁護士が事件を検討した上で、法テラスが合理的な勝算を認めることを指します。
例えば、離婚調停で証拠が乏しい場合や、借金整理で債務額が過大すぎる場合は否認される可能性があります。ただし、詳細審査は無料相談時に行われ、否認されても他の相談窓口を紹介されます。この条件は主観的要素が強いため、事前の相談が鍵です。過去の利用実績では、約8割がこの基準を通過しています。
着手条件3:民事法律扶助の趣旨に適すること
法テラスの制度趣旨に沿ったトラブルでなければなりません。対象は民事・家事・行政事件に限定され、刑事事件(加害者側)やビジネス争議は除外されます。
具体的な対象例:
- 離婚・男女問題(慰謝料、親権)
- 相続・遺言(遺産分割、遺留分)
- 借金・債務整理(自己破産、過払い金)
- 労働問題(未払い賃金、解雇)
- 不動産明け渡し、境界争い
一方、非対象例:
- 刑事事件の弁護(被害者側相談は一部可)
- 企業間取引、金銭貸借の回収
- 外国人や法人の申請
これにより、公的資金が本当に必要な個人トラブルに集中されます。ご相談前に法テラスの公式サイトで対象確認をおすすめします。
法テラス利用の流れと申請方法
着手条件を確認したら、以下の流れで進めます。所要時間は初回相談から審査まで約1-2週間です。
- 無料相談の申し込み:法テラス相談センター(電話:0570-078374、平日9-17時)またはウェブサイトから予約。全国250箇所の事務所で対応。
- 相談当日:法律相談票と援助申込書を記入。収入証明書、事件資料を持参。30分程度の面談で弁護士がアドバイス。
- 審査申請:条件適合と判断されれば、正式申請。資力証明書類を提出し、1週間程度で承認通知。
- 契約・着手:法テラス指定の弁護士と契約。費用は法テラスが立て替え(着手金上限11万円程度)。
- 償還と免除:勝訴後、分割弁済(月5千円~)。完済困難なら免除申請可(収入基準クリアで8割承認)。
オンライン相談も増え、2026年現在、Zoom対応事務所が拡大中です。混雑時は2-3週間待ちになるので早めの連絡を。
具体例:単身者と家族世帯のケーススタディ
ケース1:40代単身男性、月収15万円、預貯金100万円、離婚調停希望
ケース2:30代夫婦+子2人、夫月収30万円・妻パート10万円、相続争い
ケース3:失業中の高齢者、年金月12万円、借金整理
注意点とよくある落とし穴
法テラス利用時の失敗を防ぐために、以下の点にご留意ください。
- 書類不備:課税証明書(直近2年分)が必須。市区町村で無料取得。
- 過去滞納:前回利用で返済遅れがあると拒否。完済証明を。
- 対象外事件:刑事弁護は別途公選弁護人申請を。
- 地域差:大阪など大都市は基準厳しめ。転居時は再計算。
- 費用相場:立て替え上限は訴訟で着手金11-22万円、報酬金5-11万円。日弁連基準の半額程度で経済的。
万一不承認でも、自治体の無料相談や日本司法書士会連合会を活用できます。
法テラスのメリットとデメリット
メリット
- 初期費用ゼロで専門家依頼可能。
- 分割返済で負担軽減(金利なし)。
- 全国ネットワークでアクセス容易。
デメリット
- 指定弁護士しか選べず、相性次第。
- 審査に時間がかかる。
- 高額資産保有者は不向き。
全体として、低所得層の司法アクレスを大幅に向上させる制度です。2025年の利用者は約25万人、承認率85%超。
関連制度と代替手段
法テラスが合わない場合の選択肢:
- 自治体相談:無料、迅速だが専門性低め。
- 日本弁護士連合会:一般報酬基準で自費。
- 法テラス+保険:弁護士費用特約加入で併用可。
- 書類作成援助:訴状作成のみで費用5万円以内。
2026年最新アップデートと今後の展望
2026年4月現在、資力基準は物価上昇を反映し微調整の可能性がありますが、基本表は安定。オンライン申請拡大で利便性向上中です。法テラスは持続可能な司法支援を目指し、AI相談ツール導入を検討。
ご自身のトラブルに当てはまるか、公式ダイヤルで確認を。早期対応が解決の近道です。


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