自民党「歴史的圧勝」という現実

2026年2月8日に投開票が行われた第51回衆院選で、自民党は単独で衆議院の3分の2を上回る議席を獲得しました。
報道によれば、自民党の獲得議席は単独で316議席、結党以来初めて300議席を超える「歴史的な圧勝」と位置づけられています。
一方、中道改革連合は公示前167議席から大幅に減らして49議席にとどまりました。
維新(36議席)と併せた与党サイドは、法案の再可決が可能な3分の2以上を確保し、文字どおり「与党一強」状態がさらに強まった形です。
テレビやネットの速報テロップには「自民・圧勝」「与党で3分の2超」といった文字が並び、スタジオでは「高市政権への力強い信任」といった解説まで飛び出しました。
数字だけ見れば、「高市早苗首相の下で、日本はこれから数年間、安定政権が続くだろう」と読むのが自然でしょう。
でも、あなたもどこかで引っかかりを覚えませんでしたか。
「こんなに圧勝してるのに、なぜかスッキリしない」「本当に“信任”なのか?」という、あのモヤっとした感覚です。
石破茂の「白紙委任ではない」と“後ろから鉄砲”の影
8日の投開票で14回目の当選を果たした自民党の石破茂前首相は、記者団のインタビューに答え、自民党の大勝について「白紙委任とは違う」と釘を刺したと伝えられています。
高市政権の信任も同時に問われた選挙であるにもかかわらず、「すべての政策がチェックなしでOKになったわけではない」という趣旨のメッセージです。
この「白紙委任ではない」発言に対して、SNS上ではかなり辛辣な反応が噴出しました。
「お前が言うな」「物申せる立場じゃないだろ」「おまゆう発言」といったコメントが多く、「後ろから鉄砲」を連想させる石破氏のスタイルへの苛立ちが可視化されています。
というのも、石破氏はこれまで、安倍政権や麻生政権時代にも党内非主流派として政権批判を行い、「後ろから鉄砲を撃つ人」と党内で揶揄されてきた経緯があります。
2025年のラジオ番組でも、この批判に対し「物言わない自民党って何なのよ」と反論し、「みんなが黙るってことで日本はどんな歴史たどりましたか?」と、戦前の日本を引き合いに出して持論を展開していました。
つまり、今回の「白紙委任ではない」という発言は、石破流の「権力に対する距離感」の延長線上にあるものだと解釈できます。
ただし、SNSの反応を見る限り、そのスタイルは「勇気ある内部批判」と受け止められるどころか、「また後ろから撃っている」として炎上気味になっているのが現実です。
過去には、選挙で大敗した石破政権に対し「#石破辞めるな」というハッシュタグがSNSで広がったこともあり、当時は若い支持層から一定の評価を受けていました。
しかし現在は、「自分がトップだったときに結果を出せなかったのに、よく言えるな」というツッコミが優勢で、空気が一変している印象です。
若者たちの冷めた怒りと「お前らまとめて信用できない」感
では、今回の「自民党圧勝×石破発言」に対して、若い世代はどう反応しているのでしょうか。
SNS上の反応を眺めていると、いくつかのパターンが見えてきます。
- 「自民圧勝=国民の総意」と言い切るのは違和感
投票率は前回を上回ったとされる一方で、それでも4割強は棄権している可能性が高く、「投票に行った人の中では、という話でしょ」という冷ややかな視線があります。 - 「野党が弱すぎ」「選択肢がない」というあきらめ
中道改革連合の大幅減などを見て、「自民党が勝ったというより、他が自滅しただけ」「受け皿がないから、消去法で与党」という声が目立ちます。 - 石破氏へのツッコミは、“政治家全体”への不信の裏返し
「お前が言うな」は、石破個人に向けられているようでいて、「与党も野党も、結局、自分たちの都合でしか動いていないだろ」という、政治家一般への不信の表現でもあります。 - 政治に“熱狂”できない世代
2020年代前半から続く景気不安、物価高、将来不安の中で、「誰が首相になってもどうせ同じ」「勝った負けたで盛り上がっているのは政治家とマスコミだけ」という、諦めにも似た感情が広がっています。
一方で、「#石破辞めるな」のようなハッシュタグ運動に参加していた層の中には、「あのとき応援したけど、結果が出なかった」「期待した分、今は距離を置いている」という“元・石破支持”の若者も少なくないようです。
彼らにとって今回の「白紙委任ではない」発言は、「また理屈は正しいけど、あなたが言っても響かない」という、苦い既視感を伴うものになっているのでしょう。
「自民党圧勝」でも変わらない日常と、これから問われるもの
ここで、あなた自身の感覚に少し寄り添ってみたいと思います。
選挙特番を見終わった翌朝、あなたの通勤電車の混み具合は変わりましたか。
コンビニの値札は下がりましたか。家賃や住宅ローンの支払いが急に楽になりましたか。
多くの人にとって、答えは「いいえ」でしょう。
自民党が300議席を超えても、野党が大敗しても、明日も同じ時間に仕事が始まり、同じように電気代やガス代の請求書が届きます。
だからこそ、「自民党圧勝」というニュースを見ながらも、どこか他人事のように感じてしまう。
そして、その直後に「白紙委任ではない」とコメントする石破氏を見て、「いや、あなたたち政治家同士でやっていてくださいよ」と、半歩引いた目で見てしまうのです。
しかし、本当にそれでいいのでしょうか。
「どうせ変わらない」「誰がやっても一緒」と言い続けることは、結果として“白紙委任”に限りなく近い状態をつくってしまいます。
投票率が上がったとはいえ、まだまだ「行かない人」のほうが多数派であり、その沈黙が、政権与党にとって最も都合のいい土壌になっているのも事実です。
石破氏は「みんなが黙るってことで日本はどんな歴史たどりましたか?」と問いかけました。
この言葉自体は、戦前・戦中日本の教訓を踏まえた重いメッセージです。
問題は、それを「誰が」「どのタイミングで」「どんな実績をもって」言うのか、という点なのかもしれません。
読者である「あなた」にできること
ここまで読んできて、「結局、誰も信用できないじゃないか」と、余計に疲れてしまったかもしれません。
自民党の圧勝も、石破茂の“後ろから鉄砲”イメージも、若者の冷めた怒りも、そのどれもが「日本政治の一部の断面」でしかありません。
本当に大事なのは、その断面を見たうえで、あなたがどう考え、どう動くかです。
難しいことをする必要はありません。
- ニュースを「見ない」のではなく、「複数のメディアで見比べる」
- SNSの一部の切り抜きではなく、実際の会見全文や発言の文脈を確認する
- 次の選挙で、「行かない」という選択ではなく、「最もマシだと思う選択」を探す
それだけでも、「白紙委任」とは違う一歩になります。
石破茂の「白紙委任ではない」という発言にカチンと来た人も、「いや、よく言ってくれた」と感じた人もいるでしょう。
どちらにせよ、その感情を“毒づき”で終わらせず、「じゃあ、自分はどうやって政治と距離を取る(あるいは関わる)のか」を考えることが、これからの日本を少しずつ変えていくはずです。
自民党圧勝の翌日、あなたの生活はすぐには変わりません。
けれど、「どうせ変わらない」と思って何もしない日々が積み重なると、本当に何も変わらない未来がやってきます。
選挙のたびに流れる「圧勝」「惨敗」という派手なテロップの裏側で、静かに積み上がっていくのは、一人ひとりの「見て見ぬふり」かもしれません。
その流れに、あなたはどこかで「ちょっと待った」と言えるか。
自民党の歴史的圧勝と、石破茂の“後ろから鉄砲”をめぐる論争は、実は「私たち自身の態度」を試す問いかけでもあるのだと思います。


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