慢性硬膜下血腫とは?高齢者に多い“ゆっくり進行する頭の血のかたまり”をやさしく解説【症状・原因・治療・再発予防】

豆知識
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慢性硬膜下血腫ってどんな病気?

higejii(ひげ爺)
higejii(ひげ爺)

まず、「慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)」という名前からして難しく感じますよね。言葉をかみ砕いてみると、イメージが少ししやすくなります。

  • 「硬膜」:脳を包んでいる、いちばん外側の厚い膜のこと。
  • 「硬膜下」:その硬膜と脳のあいだのすき間を指します。
  • 「血腫」:血のかたまり(血がたまって固まったもの)です。

つまり、慢性硬膜下血腫とは、「頭の中で、硬膜と脳の間に血のかたまりが、ゆっくり時間をかけてたまってしまう病気」です。

多くの場合、「頭をぶつけた」ことがきっかけで起こりますが、打った直後にはほとんど症状が出ません。ところが、その数週間から数か月後になって、じわじわとおかしな症状が出てくるのが、この病気の厄介なところです。

なぜ起こる?原因とメカニズム

「頭を打ったのは覚えているけど、その時は大丈夫だったのに…」
慢性硬膜下血腫の患者さんやご家族からは、こうした言葉がよく聞かれます。

主な原因

  • 軽い頭部外傷(転倒して頭をぶつけた、家具の角に当てた、など)。
  • とくに高齢者では、アルコール摂取や加齢で脳が少し縮み、脳と硬膜の間にすき間ができやすくなっています。
  • このすき間にある細い静脈が、頭を打った衝撃で切れ、少量の出血が起こります。

出血の量が少ないうちは、症状はほとんどありません。ところが、その後もじわじわと血液や浸出液がたまり続け、数週間~数か月かけて「血腫(血のかたまりの袋)」が大きくなっていきます。この血腫が脳を外側から圧迫することで、さまざまな神経症状が現れてくる、という流れです。

危険因子になりやすいもの

  • 高齢(特に70歳以上)
  • 転倒しやすい状態(足腰の弱り、ふらつき、視力低下など)
  • 抗凝固薬・抗血小板薬(血をサラサラにする薬)の内服歴がある場合。

こうした要素が重なっている方は、軽い打撲でも血腫ができやすく、注意が必要になります。

初期症状は?「なんとなくおかしい」が大事なサイン

慢性硬膜下血腫の厄介なところは、「典型的な始まりの症状」がわかりにくいことです。血腫が少ないうちは、ほとんど症状が出ない、あるいは「なんとなくだるい」「少し元気がない」程度にしか感じられないこともあります。

血腫の量がある程度を超えて、脳を圧迫し始めると、次のような症状が徐々に目立ってきます。

  • 鈍い頭痛・頭重感(特に朝方に強いことがある)。
  • 吐き気や嘔吐。
  • なんとなく元気がない、やる気が出ない。
  • ぼんやりして反応が鈍い、眠そうにしている時間が増える。
  • 食欲が落ちてきた。

こういった「何となく」の変化が数日~数週間かけて続いているときは、「年のせい」「疲れかな」と片づけず、一度脳神経外科などで相談してみることが重要です。

代表的な症状:どんなサインが出るのか

血腫が大きくなると、脳の特定の場所が圧迫され、よりはっきりした神経症状が出てきます。代表的なものを、少し詳しくみていきましょう。

運動や感覚の症状

  • 片麻痺:左右どちらか一方の手足に力が入りにくい、動きがぎこちない。
  • 手足のしびれ:片側にしびれ感や違和感が出てくる。
  • 歩行障害:ふらつく、足が前に出にくい、転びやすくなる。

周りから見ると、「歩き方がおかしくなった」「片足を引きずるようになった」といった変化として気づかれることが多いです。

言葉・認知機能の変化

  • 言語障害(失語):言葉が出にくい、ろれつが回らない、話している内容がちぐはぐになる。
  • 認知機能の低下:急に物忘れが増えた、会話がかみ合わない、同じことを何度も聞く。
  • 意欲や活動性の低下:大好きだったテレビや趣味に興味を示さなくなる。

一見すると「認知症が進んだのかな」と思うような症状ですが、慢性硬膜下血腫が原因だった、というケースも少なくありません。

その他の症状

  • けいれん発作が起こることもあります。
  • 尿失禁(トイレまで間に合わない、おもらしが増える)。
  • 意識障害:呼びかけに反応しづらい、ぐったりしている。

こうした症状が急に強く出てきた場合は、救急受診が必要な場合もあります。

慢性硬膜下血腫と認知症の違い

高齢の方で、「最近、物忘れがひどくなってきた」「会話がかみ合わない」となると、まず「認知症」を疑うことが多いかもしれません。しかし、慢性硬膜下血腫でも同じような症状が出ることがあります。

大きな違いは、「頭部画像(CTやMRI)で血腫がはっきりと確認でき、適切な治療を受けると症状が改善する可能性が高い」という点です。もちろん、すべてが元通りになるとは限りませんが、「認知症だと思っていたら、慢性硬膜下血腫で、治療後にかなり良くなった」という例も報告されています。

どうやって診断する?CT・MRI検査

「それって、本当に慢性硬膜下血腫なの?」
診断の決め手になるのが、頭部CTやMRIなどの画像検査です。

診察で確認すること

医師は、まず以下のようなポイントを確認します。

  • いつ頃から、どんな症状が出始めたか。
  • 数週間~数か月以内に、転倒や頭をぶつけた記憶がないか。
  • 手足の力や感覚、話し方、歩き方、意識の状態などの神経学的所見。

そのうえで、頭の中を詳しく見るために、CTまたはMRIを行います。

画像検査で見えるもの

  • 硬膜と脳の間に、レンズ状あるいは半月状の血腫が認められます。
  • 血腫の大きさや位置によって、どの部分の脳が圧迫されているかがわかります。
  • 反対側の脳が押されている場合には、「正中偏位」と呼ばれるずれが見られることもあります。

CT検査は短時間で結果がわかるため、救急現場でもよく使われます。MRIはより詳細な情報が得られますが、時間や環境の制約があるため、状況に応じて使い分けられます。

基本的な治療法:手術は怖い?

慢性硬膜下血腫の主な治療は、「溜まった血腫を外に出し、脳への圧迫を解除する手術」です。「手術」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、多くの場合は、比較的短時間で行われる「穿頭血腫除去術(せんとうけっしゅじょきょじゅつ)」が選択されます。

穿頭血腫除去術のイメージ

  • 頭蓋骨に小さな穴を開ける(穿頭)。
  • その穴から血腫の袋にアプローチし、中にたまっている血液や液体を少しずつ洗い流すように排出します。
  • 排出用の細いドレーン(管)を一時的に留置して、術後も残った血液が外に出るようにします。

この処置によって、脳が圧迫から解放されるため、多くの患者さんで「手足が動きやすくなった」「頭痛が和らいだ」「会話がはっきりしてきた」といった改善が期待できます。

手術以外の選択肢は?

血腫が小さく、症状もごく軽い場合には、経過観察や薬物治療が選ばれることもあります。しかし、症状が進行している場合や、脳がはっきり圧迫されている場合には、手術が検討されることが一般的です。

手術後の経過とリハビリ

「手術をすれば終わり」ではなく、その後の回復の過程もとても大切です。

術後すぐに期待できる変化

  • 頭痛の軽減。
  • 片麻痺や歩行障害の改善(程度には個人差があります)。
  • ぼんやり感や意識レベルの改善。

ただし、神経症状が長く続いていた場合などは、完全な回復までに時間がかかったり、後遺症が残る場合もあります。

リハビリの重要性

  • 歩行訓練や筋力トレーニングで、再び転倒しにくい体づくりをする。
  • 言語療法で、言葉の出にくさを改善していく。
  • 作業療法で、日常生活動作(食事・着替え・トイレなど)をスムーズに行えるように整える。

こうしたリハビリを通して、生活の質をできる限り取り戻していくことが大切になります。

再発の可能性と予防策

慢性硬膜下血腫は、残念ながら一定の割合で「再発」することが知られています。一度手術で血腫を取り除いても、また同じ場所に血液や液体がたまってしまうことがあるのです。

再発しやすいケース

  • 血腫の袋(被膜)が厚く残っている場合。
  • 高齢で、脳が全体的に萎縮している場合。
  • 抗凝固薬・抗血小板薬を継続する必要がある場合。

再発した場合でも、基本的な治療は初回と同様に、穿頭血腫除去術などが中心になります。

再発予防のためにできること

  • 転倒を防ぐ環境づくり(段差をなくす、手すりをつける、滑りにくいスリッパを使うなど)。
  • 視力や足腰の状態のチェック、必要に応じた補助具の使用。
  • アルコール摂取の見直し。

完全に再発をゼロにすることは難しいですが、「もう一度、強く頭を打たないようにする」ための工夫は、ご家庭でもできる大事なポイントです。

家族が気づける「いつもと違う」のポイント

慢性硬膜下血腫の患者さん本人は、「なんとなくだるい」「頭が重い」程度にしか感じていないことも多く、自分から受診を希望しないケースもあります。そこで重要になるのが、周囲の家族や介護者の視点です。

次のような変化が見られたときは、「もしかして…?」と、一度疑ってみてください。

  • 最近、よく転びそうになる、歩き方が変わった。
  • 一度頭をぶつけてから、なんとなく元気がない日が続いている。
  • 片側の手足の動きが悪くなった、箸やコップを落とすようになった。
  • 話し方がはっきりしない、言葉がなかなか出てこない。
  • 物忘れや同じ話の繰り返しが急に増えた。

「年齢的に認知症かもしれない」と思っても、慢性硬膜下血腫が隠れていることがあります。気になる変化が出てきたら、「脳神経外科」や「神経内科」などに相談し、必要に応じて頭部CTやMRIを検討してもらうと安心です。

受診の目安:こんなときはすぐ相談を

最後に、「どんな症状が出たら医療機関へ行くべきか」を、少し整理しておきます。

早めの受診を考えたいサイン

  • 軽い頭部外傷から数週間~数か月以内に、頭痛や頭重感が続いている。
  • 片側の手足に力が入りにくい、しびれる感じが続く。
  • 歩き方がふらつく、転びやすくなった。
  • 話し方がはっきりしない、言葉が出にくい。
  • 物忘れや反応の鈍さが、短期間で目立ってきた。

迷わず救急受診を検討したいサイン

  • 意識がはっきりしない、呼びかけに反応しづらい。
  • 激しい頭痛とともに、突然の片麻痺やけいれんが起きた。
  • 短時間のうちに症状がどんどん悪化している。

こういった症状がある場合は、できるだけ早く医療機関を受診し、必要なら救急車の利用も検討しましょう。

おわりに:怖がりすぎず、「気づく力」を持つために

慢性硬膜下血腫は、確かに放っておくと命にかかわることもある、怖い病気です。しかし、症状に早く気づき、CTやMRIなどで診断して適切な治療を受ければ、多くの人で症状の改善が期待できます。

「最近ちょっと様子がおかしいな」「あのとき頭を打ってから、なんとなく元気がないな」と感じたら、それは体からの大事なサインかもしれません。怖がりすぎる必要はありませんが、気づいたときに一度医療機関で相談してみる――その一歩が、ご本人やご家族の将来を守る、大きな一歩になります。

この記事が、「慢性硬膜下血腫って何だろう?」と感じていた方の不安を少しでも和らげ、「念のため、一度診てもらおうかな」と思うきっかけになれば幸いです。

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