
こんにちは。
この記事を読んでくださっているあなたは、もしかすると介護の仕事に関わっていたり、家族を介護していたり、あるいはニュースで「介護人材の不足」を耳にして気になっているのではないでしょうか。
日本の介護現場では今、深刻な問題が静かに、しかし確実に進行しています。
それが「介護福祉士の離職者増加」と「低賃金による人手不足の悪循環」です。
この記事では、介護福祉士の現実をデータと現場の声から見つめ直し、なぜ離職が止まらないのか、そして希望はどこにあるのかを一緒に考えていきます。
介護福祉士とは ― 専門職なのに報われない現実
「介護福祉士」とは、言うまでもなく介護のプロフェッショナルです。
国家資格を持ち、高齢者や障がいのある人の日常生活の支援、暮らしの質の向上を目的に働く専門職。
しかし、その専門性に見合うだけの待遇が得られないのが、この仕事の最大の矛盾です。
厚生労働省のデータによれば、介護福祉士の平均月給は約26万円前後(手取りでは20万円前後)と言われています。
一方で、長時間労働・夜勤・身体介助といった肉体的にも精神的にも過酷な仕事が日常です。
その結果、毎年新たに資格を取得しても、数年以内に辞めてしまう人が後を絶ちません。
離職率の現実 ― 「やりがい」だけでは続かない仕事
介護職全体の離職率は約15%、転職率を含めると20%を超えるとも言われています。
つまり、10人に2人は毎年職場を去っているという計算です。
その理由をひも解くと、次のような声が多く聞かれます:
- 「給料が安くて生活が厳しい」
- 「夜勤やシフトの負担が大きい」
- 「人手が足りず、有給なんて取れない」
- 「ありがとうと言われるのは嬉しいけど、心が持たない」
要するに、「やりがいだけ」では生活も心も支えきれないのです。
福祉の心を持った人ほど現実に傷つき、心をすり減らして去っていく――これが現在の介護現場のリアルです。
現場の声:伝えたい「本当のリアル」
兵庫県で特養ホームに勤める40代女性介護福祉士の声を紹介します。
「夜勤明けの日は眠れず、そのまま家事。体はいつもだるい。それでも利用者さんの笑顔を見ると救われる。でも、給料明細を見るとため息が出る。このままだと続けられないと、何度も思った。」
こうした現場の声は,全国どの地域でもほとんど共通しています。
介護職は「尊い仕事」と称賛されますが、その言葉と待遇の差が、現場の人々の心をむしばむ要因になっているのです。
なぜ介護福祉士は低賃金なのか?
介護報酬は国の制度によって決まっており、介護施設の収益も限られています。
つまり、いくら経営者が職員に還元したくても、国の仕組み自体が報酬を抑えているのです。
また、介護事業所の多くは中小規模で、余裕のない経営状況が続いています。
「人件費を上げたいけれど、運営が赤字になる」――このジレンマに苦しむ事業所は少なくありません。
加えて、社会全体として「介護は低賃金でも仕方ない」という無意識の価値観が根強いことも問題です。
その背景には、「家族で支えるのが当たり前」「女性の仕事」といった固定観念が影を落としています。
日本社会を支える“見えない労働”
もう一度考えてみてください。
介護の仕事がなければ、在宅介護も施設運営も成り立ちません。
介護福祉士は、社会の土台を支える「見えないインフラ」です。
少子高齢化が進み、2040年には高齢化率が35%を超えるとされています。
そんな中で介護人材の流出が止まらないというのは、まさに“社会の警告”とも言える事態です。
海外人材の受け入れと日本人離れの矛盾
政府は人材不足の対策として、外国人介護職の受け入れを積極的に進めています。
EPAや特定技能ビザを通じ、東南アジアを中心に人材が来日しています。
しかし、この政策には矛盾もあります。
日本人職員の待遇が改善されないまま、外国人頼みの仕組みを続ければ、根本的な解決にはなりません。
さらに、言語や文化の違いによって現場での摩擦や誤解が起きやすいという課題も残ります。
「続けたい」と思える環境づくりを
離職を食い止めるために必要なのは、“心”と“生活”の両方を支える環境づくりです。
- 生活できるだけの給与水準の確保
- シフト・夜勤の負担軽減
- チームで支える仕組み(ワンオペ廃止)
- メンタルサポート体制の強化
- 介護職の社会的イメージ向上
特に注目すべきは「介護職の社会的評価」です。
世間のイメージが変われば、若い世代の「なりたい職業」候補にも入ってきます。
介護×テクノロジー ― 希望の光はここに
実は、希望の兆しも見え始めています。
次世代の介護現場では、テクノロジーが静かに革命を起こしています。
- 見守りAIカメラ
- 移乗支援ロボット
- 自動排泄処理装置
- スマート介護記録アプリ
これらの技術によって、「人にしかできないケア」に集中できる環境が少しずつ整っています。
疲弊ではなく「やりがいと成長」を感じられる介護の未来が、ようやく形になりつつあるのです。
「ありがとう」で終わらせない社会へ
介護福祉士の仕事は、本来「人間の尊厳を守る」ための尊い仕事です。
それなのに、「ありがとう」の言葉だけで報われる社会でいいのでしょうか。
介護に携わる人が、自分の生活を犠牲にせずに笑顔で働ける環境――
それこそが、真に「やさしい社会」と呼べる姿なのではないでしょうか。
まとめ ― 介護福祉士の未来を一緒に描こう
離職者が増え続ける今こそ、社会全体で介護の現実を見つめ直す必要があります。
介護福祉士が誇りを持って働ける環境を整えることは、つまり私たちの未来を守ることです。
この記事が、介護現場で働くあなたに「希望」を届け、社会の無関心に一石を投じるきっかけとなれば幸いです


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