取れ過ぎなのに“漁の停止”!?

こんばんは。今日はちょっと「海のニュース」について、一緒に考えてみませんか?
普段ニュースを見ていて「また不漁か…」という言葉を聞くことはあっても、「取れ過ぎで漁が止まる」なんて、聞いたことがない人も多いでしょう。でも、それが現実に起きたのです。
2025年10月、水産庁は全国の小型スルメイカ釣り漁に対して、「採捕停止命令」を出しました。理由はなんと「豊漁すぎたから」。
そう、“取れ過ぎ”で初の停止命令なんです。
水産庁の発表内容をわかりやすく整理すると…
農林水産大臣・鈴木憲和氏が23日に明らかにした内容によると、小型スルメイカ釣り漁の漁獲量は、当初の2800トンから途中で4900トンまで引き上げていたにもかかわらず、それを上回ってしまったとのこと。
このため水産庁は全国の漁業者に対して、10月末をもって採捕の一時停止命令を発出。
命令は来年3月の漁期終了まで有効で、1990年代に漁獲可能枠制度(TAC)が導入されて以来、スルメイカを理由とする停止命令は初めてとなります。
「取れ過ぎ」は一見いいことに思えるけれど…
「豊漁なのに、なんで止めるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
でもここには、海の資源を守る大切な理由があるのです。
実は、スルメイカの漁獲量はここ数十年で“乱高下”しています。
数年前までは記録的不漁で、「姿が見えない」「海が静かすぎる」と漁師たちが嘆いていたほど。ところが今年に入って、海域によっては急に群れが大量発生。
まさに“天国と地獄”のような変化です。
こうした極端な変動は、地球温暖化による海流の変化、プランクトンの発生周期のずれ、さらには産卵場の移動が複雑に関係していると指摘されています。
だからこそ、水産庁は「今がチャンス」と考えたのです。
資源が一気に増えた今こそ、捕りすぎてまた減少に転じることを避ける。
“未来に残すための停止命令”、それが今回の決断の本質なのです。
スルメイカとはどんな魚介なのか?
スルメイカ(Surumeika)は、日本人にとってとても身近な海の幸。
刺身、寿司、焼きイカ、おでん、塩辛、乾物——あらゆる食卓に欠かせません。
特に小型釣り漁は、北海道・青森・新潟など日本海側で盛ん。夜の海に浮かぶ無数の漁船の灯が風物詩として知られています。
そんなスルメイカが「豊漁すぎて漁が止まる」なんて、地元漁師にとっても驚きです。
青森のベテラン漁師はこう話します。
「まさか“取れすぎ注意”なんて言われる日が来るとはなあ。でも、海のことを考えりゃ、止めるのも仕方ねぇ」
背景にはAI解析も活躍!デジタル漁業時代へ
近年、水産庁は漁業資源を管理するためにAIや衛星データを活用しています。
スルメイカの群れの移動を人工衛星データや海流予測モデルから解析し、漁場をリアルタイムで把握できるようになっています。
この技術の進歩が、今回の「豊漁」の早期把握にもつながったのです。
デジタル漁業化が進むことで、今後は資源の急変に柔軟に対応できる仕組みが整いそうですね。
豊漁の裏で起きている“海の変化”
一方で、科学者たちはこの豊漁の持続性を懸念しています。
スルメイカは水温変化に敏感な生物で、産卵場所がズレるだけで資源量が急減します。
今回の豊漁も、海水温の一時的な乱流がもたらした“偶然”に近い可能性があります。
北太平洋海域では、韓国や中国船も増加しており、国際的な資源共有の難しさも浮き彫りです。
「日本だけが守っても意味がない」——それが現場のリアルな声。
この“取れ過ぎで初”の措置が、世界的な漁業管理の在り方を見直す契機になるかもしれません。
水産庁の次の一手
今回の停止命令に合わせて、水産庁は持続可能な漁業再設計に向けた議論を進めています。
共有漁獲猶予枠(5700トン)をどのように割り当てるか、他の漁業種への再配分方法を慎重に検討中です。
「豊漁の時にこそ、未来を考える」。
それが、今の漁業政策のキーワードです。
同時に地元自治体も「スルメイカ資源を観光やブランド化につなげる」試みを始めています。青森・八戸や函館などの港町では、限定イベントや冷凍商品の展開を進める動きも見られています。
私たちにできること
私たち消費者にもできることがあります。
それは「持続可能な水産物を選ぶ」こと。そして「食べて応援する」ことです。
MSC(海洋管理協議会)やASC(養殖管理協議会)などの認証マークをチェックしてみてください。
こうした小さな意識が、海の未来に確実に影響します。
“取れ過ぎ”というニュースの意味
このニュース、一見すると喜ばしい豊漁ニュースに見えますが、実は日本の海が「変化の時代」に入ったことを示すシグナルでもあります。
不漁の年もあれば、突然の大豊漁もある。
でも重要なのは、その波をどう「長期の持続」に変えるかです。
スルメイカは、ただの一商品ではありません。
それは、日本人の食文化と海への信頼の象徴。
今回の停止命令は、一瞬のブレーキではなく、未来の加速のための準備期間──
そう思って、次のニュースを見守っていきたいですね。
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