
あなたは、「ヤングケアラー」という言葉を聞いたことがありますか?
ここ数年、ニュースやSNSで見かけるようになったものの、実際にどんな子どもたちのことを指すのか、まだ知らない人も多いかもしれません。
「ヤングケアラー」とは、本来大人が担うべき家族の介護や世話を、子どもや若者が日常的に行っている人のことをいいます。
介護といっても、「おばあちゃんの買い物を手伝う」程度のことではありません。
たとえば、次のようなケースもあります。
・病気の親に代わって弟妹の世話や送迎をする
・精神疾患を持つ家族の感情を支え、家事をこなす
・身体の不自由な親の入浴介助・食事介助を行う
・介護と学業の両立に追われ、友人と遊ぶ時間も取れない
これらの「家庭の事情」によって、子どもたちは知らないうちに“大人の役割”を背負うことになります。
日本でヤングケアラーが増えている背景
日本では少子高齢化と家族構成の変化により、ヤングケアラーの数が年々増加しています。
厚生労働省の調査(2022年)では、中学生の約17人に1人、高校生の約14人に1人がヤングケアラーに該当するとされています。
この割合は決して小さくありません。
その背景には、次のような社会構造があります。
- 介護人材の不足
介護施設への入所が難しく、家族が介護を担わざるを得ない現実があります。 - ひとり親家庭の増加
とくに母子家庭では、母親がフルタイムで働く間に子どもが家事・介護を担うケースが増えています。 - 経済的な貧困
外部ヘルパーを雇う余裕がなく、家庭内でカバーしようとすることが多いのです。 - 精神疾患・依存症の増加
親がうつ病やアルコール依存により生活機能を失い、子どもが支える役割を担ってしまいます。
こうした社会背景が絡み合い、見えにくい苦労を抱えた子どもたちが生まれているのです。
子どもたちの現実:目に見えない孤独
ヤングケアラーの生の声を聞くと、共通して語られるのは「孤独」と「罪悪感」です。
「自分が支えなきゃ」「誰にも言えない」「学校では普通を装っている」——。
重すぎる責任感と社会の無理解が、子どもたちの心を静かにすり減らしていきます。
ある高校生の例では、母親が精神疾患を抱え、弟の面倒や家事すべてを彼女が担っていました。
学校では常に眠そうに見られ、「やる気がない子」と誤解され、教師にもなかなか理解されませんでした。
本当は勉強が好きで、将来の夢もあったのに…。
そして、「私が支えなきゃ家族は壊れてしまう」という思いが強くなるほど、誰にも助けを求められなくなっていきます。
ヤングケアラー問題の根底には、「家庭内の問題は外に出さないほうがいい」という日本社会の空気が深く影響しています。
しかし、その沈黙こそが、支援の届かない最大の理由なのです。
学校生活と夢への影響
ヤングケアラーの多くは、学業や進路で困難に直面します。
宿題をする時間も、部活動をする時間も足りず、進学をあきらめざるを得ないケースも少なくありません。
学校では「なぜ遅刻ばかりするの?」「授業に集中してないね」と注意されるものの、先生たちも裏で何が起きているのかを把握できていないことが多いのです。
つまり、ヤングケアラーは 「勉強する権利」や「自由に夢を描く権利」さえも奪われている という深刻な現実に直面しています。
行政や地域の支援は十分か?
ここ数年で、政府や自治体もヤングケアラー支援に本格的に動き出しました。
たとえば厚労省の「ヤングケアラー支援モデル事業」では、相談窓口の設置やスクールソーシャルワーカー配置が進められています。
具体的な支援例としては:
- 行政による個別相談・家庭訪問
- 学校内での支援員(スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー)
- 家事代行・送迎などの外部支援制度
- 当事者同士の交流会(ピアサポート)
しかし、支援の存在を知らない家庭も多く、制度があっても使われていないという課題があります。
「支援を受けたら恥ずかしい」「家庭の事情を話すことが怖い」と感じる子どもたちが多いのです。
私たちができること
ヤングケアラー問題に対して、行政だけでなく社会全体の理解が欠かせません。
そして、私たち一人ひとりにもできる行動があります。
- 周囲の子どもの変化に気づく、声をかける
- 家庭内での負担を家族全員で共有する
- SNSやブログなどで、問題を正しく発信する
- ヤングケアラー支援団体や地域NPOへの寄付・ボランティア参加
そして最も大切なのは、「助けを求めることは恥ではない」と伝え続けることです。
社会全体が見守り、理解しようとすることで、子どもたちが心を開ける環境が生まれます。
未来への希望——支援と共感の輪を広げよう
ヤングケアラーが「助けて」と言える社会にするためには、学校・地域・行政・企業が一体となって動くことが重要です。
たとえば企業が「ヤングケアラーだった人材」を積極的に雇用したり、学校が「介護経験」を進学選考の参考にしたりする動きも広がりつつあります。
一方で、メディアや私たち一般の人々も、「話題にすること」自体が支援の第一歩になります。
話すこと、聞くこと、理解すること——それは誰にでもできる最初のアクションです。
まとめ:誰もが“ケア”を分かち合える社会へ
ヤングケアラーという存在は、決して特別な誰かではありません。
私たちの隣に、同じクラスに、もしかしたら自分の子どもの友達にだっているかもしれません。
だからこそ、彼らを「かわいそう」と見るのではなく、
「同じ社会の一員として支え合える関係」を築くことが大切です。
未来を担う子どもたちが、家族の介護ではなく “自分の夢” に時間を使える社会へ。
そのために、今日からできる一歩を、一緒に考えていきませんか?

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