
あなたは、業務中に社用車を運転していて信号無視をしてしまい、事故を起こしてしまったらどうなるのか、不安に感じていませんか?
「会社から損害賠償を請求されるの?」「給料から天引きされてしまうの?」「自分だけが責任を負うの?」
こんな疑問や不安を抱えている方も多いはずです。
実は、社用車での事故は、特に信号無視のような重大な違反が絡むと、法的にも複雑な問題が発生します。
この記事では、実際の判例や法律の専門家の見解をもとに、あなたの不安を一つひとつ解消していきます。
「会社からの損害賠償請求は本当にあり得るのか?」「どんな場合に責任が問われるのか?」「自分を守るためにできることは何か?」
これらを分かりやすく、丁寧に解説していきます。
社用車での事故、会社の責任はどうなる?
まず、社用車を業務中に運転していて事故を起こした場合、会社には「使用者責任」や「運行供用者責任」が発生します。
使用者責任(民法715条)
これは、従業員が業務中に第三者に損害を与えた場合、会社がその損害を賠償しなければならないというものです。
たとえあなたが信号無視をして事故を起こしたとしても、会社が被害者に賠償金を支払うことになります。
会社が「社員の採用や監督に十分な注意をしていた」と証明できれば責任を免れることもできますが、実際にはこれが認められることはほとんどありません。
運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)
さらに、会社が「自動車の運行の用に供している」場合には、人身損害について、運行供用者責任も負います。
つまり、業務中に社用車で事故を起こした場合、会社は被害者への賠償責任を負うことになるのです。
信号無視による事故、過失割合はどうなる?
信号無視で事故を起こした場合、過失割合はどうなるのでしょうか?
一般的に、一方が赤信号無視、もう一方が青信号を守っていた場合、過失割合は「10:0」になるケースが多いです。
ただし、信号無視をしたのが歩行者や自転車の場合や、被害者側にも回避できた余地があった場合には、必ずしも10:0にならないこともあります。
また、事故の状況によっては刑事罰(懲役や罰金)が科されることもあります。
会社は社員に損害賠償を請求できるのか?
ここからが本題です。
会社が被害者に賠償金を支払った後、あなた(社員)に対して「損害賠償を請求できるのか?」という点について解説します。
会社が社員に損害賠償を請求できる法的根拠
会社は、社員が業務中に社用車で事故を起こし、会社に損害が発生した場合、社員に対して損害賠償を請求することができます。
その根拠は、主に以下の2つです。
1. 債務不履行責任(民法415条、416条)
労働契約に基づき、社員は会社に損害を与えないように配慮する義務があります。
社員が故意または過失(信号無視など)で会社に損害を与えた場合、会社は社員に損害賠償を請求できます。
2. 不法行為責任(民法709条)
社員が故意または過失で会社の権利を侵害した場合も、会社は社員に損害賠償を請求できます。
3. 使用者責任による求償権(民法715条3項)
会社が被害者に賠償金を支払った後、社員に対して「求償権」を行使し、その賠償金の一部または全部を請求することもできます。
ただし、会社が支払った賠償金の全額を社員に負担させることは難しく、実際の判例でも「社員の賠償額が4分の1(会社が4分の3)」に制限されたケースもあります。
会社からの損害賠償請求、実際はどうなる?
では、実際に会社から損害賠償を請求されるケースは多いのでしょうか?
会社は、信号無視などの重大な過失が認められた場合に、社員に対して損害賠償を請求することができます。
しかし、請求するかどうかは会社の判断次第です。
多くの場合、会社は社員の給与から天引きすることはできません(労働基準法24条の全額払いの原則に抵触するため)。
そのため、請求する場合は「別途社員に請求する」形になります。
また、会社が損害賠償を請求する場合、その金額も「信義則上相当と認められる限度」でしか請求できません。
つまり、会社が支払った賠償金の全額を社員に負担させることは難しく、公平な分担が求められます。
信号無視事故のリスクと対策
信号無視による事故は、単なる交通違反にとどまらず、会社や自分自身に大きなリスクをもたらします。
1. 行政処分
信号無視をすると、違反点数や反則金が課されます。
たとえば、普通車の場合、赤信号無視は2点、反則金は9,000円です。
2. 刑事罰
事故の状況によっては、懲役や罰金などの刑事罰が科されることもあります。
3. 会社からの損害賠償請求
重大な過失が認められれば、会社から損害賠償を請求されるリスクがあります。
4. 社会的信用の低下
事故を起こしたことで、会社や自分の社会的信用が低下する可能性もあります。
自分を守るためにできること
では、自分を守るために何ができるのでしょうか?
1. 安全運転を徹底する
何よりも、信号無視などの重大な違反をしないことが大切です。
常に安全運転を心がけましょう。
2. 事故が起きた場合、速やかに報告する
事故が起きた場合は、速やかに会社に報告し、指示に従いましょう。
隠蔽や虚偽の報告は、責任を重くする原因になります。
3. 保険の確認
社用車には自賠責保険や任意保険が付いていることが多いですが、自分の責任範囲や補償内容を事前に確認しておきましょう。
4. 弁護士に相談する
会社から損害賠償を請求された場合や、責任の範囲が分からない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
実際の判例や専門家の声
判例紹介
過去の判例では、社員がタンクローリーを運転中に事故を起こし、会社が損害賠償を社員に請求したケースがあります。
この場合、最高裁は「事業の性格や規模、施設の状況、被用者の業務内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、予防や損失分散への配慮など諸般の事情を考慮し、損害の公平な分担という見地から相当と認められる限度で求償できる」と判断しています。
つまり、会社は社員に全額を負担させることはできず、あくまで「公平な分担」の範囲でしか請求できません。
専門家コメント
法律の専門家によると、「信号無視のような重大な過失が認められる場合、会社は社員に損害賠償を請求する権利がある。ただし、請求するかどうかは会社の判断次第であり、実際に請求されるケースは限定的」とのことです。
また、「社員の給与から天引きすることはできないため、別途請求する形になる」とも指摘されています。
Q&Aコーナー
Q. 信号無視をして事故を起こした場合、必ず会社から損害賠償を請求されますか?
A. 必ずしも請求されるとは限りません。会社の判断次第ですが、重大な過失が認められれば請求されるリスクがあります。
Q. 会社から請求された場合、全額を支払わなければなりませんか?
A. 全額を支払う必要はなく、判例では「公平な分担」の範囲でしか請求できません。
Q. 給料から天引きされることはありますか?
A. 給料からの天引きは法律で禁止されています。別途請求する形になります。
Q. 自分を守るためにできることは何ですか?
A. 安全運転を徹底し、事故が起きた場合は速やかに報告し、必要に応じて弁護士に相談しましょう。
さらに知っておきたいポイント
- 保険の重要性
社用車には自賠責保険や任意保険が付いていることが多いですが、自分の責任範囲や補償内容を事前に確認しておきましょう。 - 会社の社内規定
会社ごとに社用車の使用ルールや事故対応マニュアルがある場合があります。必ず確認しておきましょう。 - 弁護士への相談
会社から損害賠償を請求された場合や、責任の範囲が分からない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
業務中に社用車で信号無視をして事故を起こした場合、会社は被害者に賠償金を支払う義務があります。
そして、信号無視などの重大な過失が認められれば、会社は社員に対して損害賠償を請求することができます。
ただし、全額を社員に負担させることは難しく、公平な分担が求められます。
また、行政処分や刑事罰のリスクも伴います。
何よりも、安全運転を心がけ、事故を起こさないことが大切です。
万が一事故が起きた場合も、速やかに報告し、適切に対処しましょう。
最後に
「もしも」の時のために、今からできる対策をしっかりと確認しておきましょう。
あなたの不安や疑問が少しでも解消され、安心して業務に取り組めることを願っています。
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