脚気(かっけ)とは?かつての国民病が現代人に忍び寄る

「脚気(かっけ)」という言葉を聞くと、「それって昔の病気でしょ?」と思う方が多いかもしれません。明治・大正・昭和初期の日本では、白米食の普及によって多くの人が脚気を患い、多くの命を落としました。当時は原因も不明で、「感染症ではないか」「湿気の多い日本固有の病では?」とまで言われたほどです。
しかし医学の進歩により、脚気の正体は「ビタミンB1(チアミン)の欠乏」であることが分かりました。そして驚くことに、現代の私たちも再び脚気のリスクにさらされているのです。
たとえば、「コンビニ食が多い」「炭水化物中心の食生活」「疲れやすい」「脚がむくむ」「しびれる」――これらに思い当たる人は、もしかすると軽い脚気予備軍かもしれません。
脚気の怖さ:ただの疲れではないサイン
脚気は単なる「疲れ」や「冷え」と間違われやすい病気です。しかし放置すると、心臓や神経系に深刻な影響を及ぼすことがあります。
代表的な症状には次のようなものがあります。
- 全身の倦怠感(だるさ・無気力)
- 脚のむくみやしびれ、痛み
- 手足の感覚異常(ピリピリ感)
- 動悸や息切れ
- 食欲不振や体重減少
- 重度になると心不全(脚気心)
特に「脚が重い」「立ち上がるとふらつく」といった症状は、初期段階の警告サインです。現代では心不全や糖尿病性ニューロパチーなどと混同されることも多く、見逃されやすい点が問題です。
明治時代にたくさんの命を奪った「白米の罠」
脚気の歴史を知ることは、現代人の食生活を見直す大事なヒントになります。
明治期、日本海軍は多くの若い兵士を脚気で失いました。原因不明の病として恐れられる中、西洋型の食生活を導入した海軍の軍医・高木兼寛(たかぎかねひろ)は、パンと肉、野菜中心の食事を兵士に与えたところ、劇的に脚気が減少したのです。
一方、陸軍では白米を中心とした従来の食文化を維持し、多くの脚気患者を出しました。この結果、食生活による大きな違いが判明し、やがて「ビタミンB1」が発見されるきっかけになったのです。
つまり、「精製された白米中心の食生活」が脚気の最大の原因だったのです。
ビタミンB1(チアミン)の働きと不足のメカニズム
ビタミンB1は、私たちの体の中で糖質をエネルギーに変えるために欠かせない栄養素です。
もし不足すると、糖質がエネルギーに変わらないため、疲労物質が体内にたまりやすくなります。その結果、だるさ、集中力低下、脚の違和感といった症状が現れやすくなります。
特に次のような人は、B1不足に陥りやすい傾向があります。
- 炭水化物中心の食事が多い(白米・パン・麺類など)
- 甘い飲み物やお菓子をよく摂る
- アルコールを頻繁に飲む
- 運動量が多い/ストレスが多い
- ダイエット中で栄養が偏っている
お酒をよく飲む人が脚気になりやすい理由は、アルコールの代謝でビタミンB1が大量に消費されるためです。
こんな症状があったら要注意!脚気セルフチェック
次の項目に3つ以上当てはまる場合、B1不足の可能性があります。
- 最近、疲れやすくなった
- 脚がしびれたり、ピリピリした痛みがある
- 階段を登ると息切れがする
- 食欲がない・体がだるい
- 炭水化物が中心の食生活をしている
- よくお酒を飲む
- 夜更かし・ストレスが多い
もし複数該当するようなら、食生活の見直しが必要です。
脚気を防ぐための食生活:ビタミンB1を上手に摂るコツ
では、どうすれば脚気を防げるのでしょうか? 答えはシンプルで、ビタミンB1を毎日しっかり摂ることです。
ビタミンB1が多い食品
- 豚肉(特にヒレ・モモ肉)
- 玄米・麦ごはん
- 納豆・豆腐
- うなぎ・たらこ
- ごま・ピーナッツ
- 緑黄色野菜(ほうれん草・にらなど)
ビタミンB1は水溶性なので、調理中に流れ出やすい点にも注意が必要です。
例えば、茹でるよりも蒸す・炒める調理法を選ぶのがおすすめです。
また、にんにくや玉ねぎに含まれるアリシンは、ビタミンB1の吸収を助ける働きがあります。豚肉とニラ炒め、うなぎにネギを添えるといった「昔ながらの組み合わせ」には、理にかなった栄養学的理由があるのです。
サプリメントの活用も効果的
最近の食生活では、ビタミンB群をすべて食事から十分に摂るのは難しいケースもあります。そんな時は、Bコンプレックス(ビタミンB群総合サプリ)を上手に取り入れるのも有効です。
ただし、サプリメントはあくまで補助。根本的には、主食・主菜・副菜のバランスが取れた食事を意識することが大切です。
現代人の「隠れ脚気」が増えている理由
実は、現代の日本でも脚気患者は少なくありません。
その背景には、ライフスタイルの変化があります。
- コンビニ弁当・カップ麺など「精製炭水化物中心」の食事
- 野菜不足・加工食品の常食
- ダイエットによる栄養の偏り
- 長時間労働・ストレスによる栄養消耗
- アルコールやエナジードリンクの過剰摂取
つまり、私たちは無意識のうちに「エネルギーだけは摂るけど栄養が足りない」状態になっているのです。これが“現代型脚気”の温床になっています。
医師も警告する「脚気」と「心臓の関係」
脚気が深刻なのは、神経障害だけではなく、心臓にも負担をかける点です。
ビタミンB1が不足すると、心臓の筋肉もエネルギーを産生できなくなり、心拍数の増加や浮腫(むくみ)を引き起こします。進行すると「脚気心(かっけしん)」と呼ばれる心不全を起こし、命に関わることもあります。
心不全の初期症状――息切れ、むくみ、疲れ――は、脚気の症状とそっくりです。ですから、「なんとなく疲れが抜けない」「脚が重い」と感じたら、軽く見ずに一度医療機関を受診することをおすすめします。
知っておきたい!脚気の治療法と回復のプロセス
脚気の治療は、原因が明確なだけに効果も速やかです。
基本は「ビタミンB1の補給」。食事療法に加えて、病院では注射やサプリでB1を投与します。数日で症状が改善することもあります。
軽度の場合は、食生活を変えるだけでも十分に回復します。
ただし、神経障害が進んでいる場合は、完全に治るまでに数週間から数か月かかることもあります。
まとめ:脚気は「古くて新しい」現代病
脚気はもう過去の病気ではありません。
むしろ、現代の食の便利さが招いた“隠れ栄養失調”の代表例です。
あなたの疲れやすさ、脚のダルさ、食欲不振…。
それはただの「年齢のせい」ではなく、ビタミンB1不足のサインかもしれません。
毎日の食事を少し見直すだけで、脚気は確実に防げます。
今日から「玄米・豚肉・野菜」を意識して、健康な体を取り戻していきましょう。

コメント