「価値のない土地」を国に引き取ってもらえる?知らないと損する「相続土地国庫帰属制度」の全て

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豆知識
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価値のない土地、あなたも抱えていませんか?

higejii(ひげ爺)
higejii(ひげ爺)

「親から土地を相続したけれど、山の奥で使い道がない」「固定資産税だけ払い続けている」「草刈りや境界トラブルで毎年悩まされている」ーー。
こんな声を、近年本当に多く聞くようになりました。

日本では人口減少と地方の過疎化が進み、もはや誰も使わない“価値のない土地”が急増しています。中には、地図にも正確に載っていない山林や、所有者不明の田畑も少なくありません。

そして、「もう手放したい」と思っても、簡単にはいかないのがこの問題の厄介なところ。
なぜなら、相続した土地を「ただ手放す」ことは、これまで日本の制度ではほぼ不可能だったのです。

手放したくてもできない現実

これまで、いらない土地を所有してしまった人に残された選択肢は、主に2つでした。

  1. 自分で売却する
     しかし、買い手がつかないような山林や農地では、売却はほとんど不可能。むしろ、登記費用や測量費が売値を上回ることもあります。
  2. 相続を放棄する
     「相続放棄」をすれば良いのでは?と思うかもしれません。しかしこれは、“すべての遺産を相続しない”という意味。土地だけを選んで放棄することはできません。現金や家など、他の遺産もすべて手放す必要があります。

つまり、今までは「いらない土地」をどうすることもできず、管理義務だけが一生ついて回る構造だったのです。

新制度「相続土地国庫帰属制度」とは?

そこで2023年(令和5年)4月に始まった新しい仕組みが、「相続土地国庫帰属制度」です。
これは、文字どおり相続した土地を国に引き取ってもらえる
制度です。

簡単にいえば、

「もう使わない土地を、一定の条件を満たせば国が引き取ってくれる」
という夢のような仕組み。

ただし、「無条件で国にあげられる」というわけではありません。
申請には審査があり、費用もかかります。

ここから、その仕組みをわかりやすく解説していきます。

制度の対象になる土地・ならない土地

国が引き取ってくれるのは、「管理や費用の負担が小さい土地」に限られます。

対象になる土地の例

  • 更地や雑種地
  • 人の立ち入りが容易で安全な場所
  • 他人の所有物が存在しない土地
  • 隣地との境界が明確でトラブルのない箇所

対象外の土地の例

  • 建物が建っている土地(建物を解体して更地にすれば検討可)
  • 通路、私道、墓地などの利用制限がある土地
  • 倒木や産業廃棄物のある土地
  • 隣地との境界が不明確な土地
  • 他人の土地に囲まれていて行くことができない土地

つまり、**「誰が見ても問題がない状態で管理しやすい土地」**であることがポイントです。

申し込みから国有化までの流れ

制度を利用するには、次のようなステップが必要です。

  1. 法務局への相談(事前確認)
     所在地を管轄する法務局で相談します。
     書類や土地の現況を確認し、制度対象になるかどうかを教えてもらえます。
  2. 申請書の提出
     図面や登記簿、写真などを添えて正式に申請します。
  3. 現地調査・審査
     国側が現地を確認し、引き取り可能かどうかを判断します。
  4. 承認・負担金の納付
     審査を通過したら、「10年分の土地管理費」に相当する負担金を支払います。
     これは土地の種類や面積によって異なり、通常は約20万円~100万円前後
  5. 国庫帰属(引き取り完了)
     負担金を納めると、登録が完了し、土地は正式に国の所有になります。

これで、あなたの所有者としての責任は完全に消えます。

利用する前に知っておきたい注意点

新制度は画期的ですが、すべての土地に万能というわけではありません。
いくつか注意したいポイントがあります。

  • 費用が無料ではない:申請費(1筆あたり1万4,000円)と、負担金が必要。
  • 却下の可能性がある:調査で問題が見つかると、申請しても受け付けられない。
  • 申請できるのは相続人のみ:第三者が名義変更後に申請することはできない。
  • 複数の相続人がいる場合は全員の同意が必要

また、山林や農地は特に審査が厳しく、条件を満たしにくい傾向があります。

「放棄」との違いを理解しよう

この制度を、「土地を捨てる」と勘違いしている人も多いのですが、あくまで“国が承認して受け取る”制度です。
つまり、勝手に放置して無主物にはできません。

一方で、相続放棄は裁判所に申述して相続そのものを放棄する手続き
「所有権を国が引き取る」相続土地国庫帰属制度とは法的にまったく異なります。

どんな人におすすめ?

この制度を検討すべきなのは、こんなケースの方です。

  • 田舎の山林や畑を相続したが、今後利用予定がない
  • 売れない土地を管理するのが大変
  • 固定資産税が毎年の負担になっている
  • 相続登記は終えたが、誰もその土地を使う意思がない

特に一人暮らしの高齢者や後継者がいない家庭では、早めに準備しておくことが重要です。
相続登記の義務化(2024年4月施行)もあり、「所有者不明土地」の放置は今後ますます問題化します。

申請のコツと成功のポイント

制度をスムーズに活用するためのコツをいくつか紹介します。

  1. 事前相談を必ず行う
     法務局での相談を省くと、書類不備や対象外判定を受けやすいです。
  2. 現地整備をしてから申請する
     倒木・ゴミなどを片づけて、土地の状態を良く見せることが大切です。
  3. 測量図や境界確認をしっかり用意
     隣地トラブルを防ぐために、境界が不明確な場合は測量業者に依頼。
  4. 専門家を活用する
     司法書士や土地家屋調査士に依頼すると、スムーズに進みます。

まとめ:土地の“終活”を考える時代に

「手放せなかった土地を国が引き取ってくれる」。
相続土地国庫帰属制度は、一見夢のような仕組みですが、これはまさに**“土地の終活”**と呼べる制度です。

土地を次の世代へ背負わせないために、また将来のトラブルを避けるために、
今から現状の土地を見直すことが何よりも大切です。

もし、あなたが「この土地、正直もういらない」と感じているなら——
今が、真剣に考えるべきタイミングかもしれません。

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