
就職活動のサポートを掲げる「就職エージェント」が、いま新たなハラスメント問題の温床となっていることをご存じでしょうか。
それは「オワハラ(就活終われハラスメント)」に加え、「内定承諾の強要」や「不当な金銭請求」を行うケースの増加です。
学生の味方であるはずのエージェントが、内定や契約を盾に圧力をかける行為は、もはやサポートではありません。2026年現在、この問題はSNS・大学・厚生労働省でも深刻な社会課題として注目を集めています。
就職エージェントとは ― 本来の役割と仕組み
就職エージェントとは、学生や求職者に企業を紹介し、マッチングをサポートする職業紹介事業者のことです。企業側から成功報酬(紹介手数料)を得るビジネスモデルが主流で、通常、学生や求職者は無料で利用できます。
つまり、利益の出どころは「企業」です。
これ自体に問題はありませんが、この構造が歪むと、エージェントが自分の利益のために学生を急かしたり、内定承諾を強要したりする事態が生まれるのです。
「就職エージェント版オワハラ」とは
近年報告が増えているのが、エージェントによる「オワハラ(就活終われハラスメント)」です。
典型的なパターンとしては、次のようなケースが挙げられます。
- 内定を得た直後、「この企業にすぐ承諾してください。他社選考は止めてください」と強く迫られる。
- 「他の求人を見るのは企業に失礼です」と心理的圧力をかける。
- 内定承諾書を送るよう催促し、断る姿勢を見せると「推薦を取り下げる」と脅される。
- 断ろうとした際に、紹介にかかった費用の一部を請求される。
これらは、学生の自由な意思決定を侵害する「ハラスメント的行為」に該当します。
厚生労働省の統計によれば、2025年に全国の職業紹介事業者への苦情・相談件数は前年比47%増(特に20代求職者からの相談増)。中でも、金銭請求・契約トラブル・心理的圧力が上位を占めています。
内定承諾の強要 ― どこからが「ハラスメント」か
本来、内定承諾は「学生本人が納得して行うもの」であり、他社との比較や家族との相談を経て決める権利があります。
しかし、エージェントの一部は次のような「不当なプレッシャー」をかけます。
- 「この場で決めないと企業の印象が悪くなります」
- 「迷っていると採用枠が他の学生で埋まります」
- 「承諾が遅れると推薦学生として今後扱えません」
こうした言葉は、一見アドバイスに見えても、事実上の強要であり、学生に心理的苦痛を与える行為です。
また、大学推薦を活用している場合、「推薦取り消し」などの脅し文句を使うのは重大な倫理違反に当たります。
不当な金銭請求の実態
特に問題視されているのが、「内定辞退時の金銭請求」です。
一部の悪質なエージェントは、内定辞退を申し出た学生に対し、「紹介料の一部負担」「契約キャンセル料」などを請求するケースがあります。
これは法的に見て極めて不当です。
なぜなら、職業安定法第32条の6により、有料職業紹介事業において求職者(学生)に金銭を請求することは原則禁止されています(※例外は職業訓練など実費を伴う契約のみ)。
つまり、就職紹介で学生側に「損害賠償」や「費用請求」を行う行為は、法令違反に当たる可能性が高いのです。
法的観点 ― 違法性と行政対応
オワハラや不当請求は、以下の複数の法律に抵触するおそれがあります。
- 職業安定法:求職者からの金銭徴収の禁止(第32条の六)
- 消費者契約法:不当な勧誘・誤認表示による契約の取り消し可
- 民法第709条:不法行為による損害賠償請求
- 労働契約法第3条:労使の対等性確保・自由意思の尊重
さらに、厚生労働省は2025年改正の「職業紹介事業者ガイドライン」で、
“求職者の就職活動の自由を妨げる行為は禁止される。”
と明記し、違反事業者への行政指導・事業停止命令を強化しています。
2026年3月には、首都圏で活動していた某就職支援会社が学生への不当請求で事業停止処分を受けたことが報じられました。これは氷山の一角に過ぎません。
SNSで広がる被害報告 ― 声を上げる学生たち
SNS上では、#オワハラ #就職エージェント などのハッシュタグで、次のような実体験が共有されています。
- 「内定を辞退したら10万円のキャンセル料を請求された」
- 「“承諾しないなら推薦取り消す”と圧力を受けた」
- 「違約金の書面にサインさせられたが、怖くて断れなかった」
こうした体験談が拡散されることで、近年は大学側や労働局も動き始めています。
中には、大学が独自に「悪質エージェント一覧」を共有して学生を守る動きもあります。
被害を受けたときの対処法
もしあなたが就職エージェントから不当な要求を受けた場合、以下の手順で冷静に対応しましょう。
- 証拠を確保する(メール・LINE・契約書・音声記録)
- 支払い・署名を急がず、第三者に相談する
- 大学キャリアセンターや就職課に報告する
- 厚生労働省の職業紹介事業担当窓口に通報する
- 必要に応じて労働局または消費生活センターに相談する
これらの相談機関は無料で利用でき、匿名相談も可能です。
また、請求書や領収書がある場合は、消費者契約法を用いて契約の取り消しができる場合もあります。
大学・保護者ができる支援
学生本人だけでなく、周囲の支援も重要です。
大学のキャリアセンターは定期的に悪質事例を共有し、被害が確認されたエージェントとは提携停止の措置を取っています。
保護者の方も、「エージェントからの連絡が急すぎる」「契約書の内容を見せない」など、不審な点があれば早めに介入すべきです。
特に金銭に関わる契約は、本人確認・内容確認を怠らないことが被害防止の鍵になります。
信頼できるエージェントを見極めるポイント
すべてのエージェントが悪質なわけではありません。
優良な事業者には、次のような特徴があります。
- 厚生労働省に正式に届け出された紹介番号を公開している
- 契約内容を明確に説明し、承諾を急かさない
- 学生の希望やキャリアプランを尊重する
- 不当な支払いを一切求めない
- 大学公認・提携先として信頼性が担保されている
一方で、「当社限定求人」「今契約しないと選考が終わる」など、焦らせるような文句を使う会社は要注意です。
エージェント業界に求められるコンプライアンス
オワハラや不当請求の問題は、エージェント業界全体の信頼を揺るがしかねません。
そのため、2026年以降は以下の流れが進んでいます。
- 厚生労働省による「就職支援業者認定制度(仮称)」の検討
- 大学とエージェント間の業務連携ガイドライン策定
- AIマッチングの透明化・推薦プロセスの記録義務化
こうした制度整備が進めば、学生が安心して利用できる環境が整うと期待されています。
まとめ ― 「支援」と「支配」は紙一重
就職エージェントは本来、学生の就活を支えるパートナーであるはずです。
しかし、「支援」の名のもとに学生の選択を奪うような行為は、もはや支配です。
- 内定承諾を急かす圧力
- 内定辞退への不当な請求
- 契約内容を隠す勧誘
これらは「オワハラ」として許されない行為です。
そして、忘れてはならないのは――就職活動の主導権は常にあなた自身にあるということです。
正しい情報と冷静な判断をもって、自分の未来を守る選択をしてください。

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