「斜視って治るの?」

「写真を撮ると、いつも片方の目が少し外を向いている気がする」「子どもの視線が合っていないように見える」──そんな違和感から、「もしかして斜視なのでは?」と不安になって、このページにたどり着かれたのではないでしょうか。
斜視は、見た目の問題だけでなく、「物の見え方」にも影響する可能性があるため、きちんと知っておきたい目の病気の一つです。
一方で、「ネットではセルフケアで治ると書いてあった」「スマホが原因ならやめれば治るの?」など、情報がバラバラで混乱してしまう方も多いと思います。
この記事では、
- そもそも斜視とは何か
- 斜視の代表的な原因
- 子どもと大人で違う「直し方」
- 手術以外でできること・できないこと
- 日常生活で気をつけたいポイント
を、できるだけ専門用語をかみ砕きながら、あなたに語りかけるように解説していきます。
「自分や家族の場合はどう考えればいいのか?」という視点で読んでいただけるよう、順番に整理していきますね。
斜視とは?まずは基本のイメージを揃える
斜視=「両目の向きがずれている」状態
人はふつう、右目と左目の黒目(正確には眼球)が、同じ見るべき場所に向くようにコントロールされています。
ところが斜視では、この左右の視線の向きがそろわず、片方の眼球が内側・外側・上・下など別の方向へずれてしまいます。
代表的なタイプとして、
- 内斜視(内側=鼻側に黒目が寄る)
- 外斜視(外側=耳側に黒目がずれる)
- 上斜視・下斜視(上下方向にずれる)
- 交代性斜視(右目・左目が交互に斜視になる)
などがあります。
ぱっと見てわかることもあれば、「よく見ると時々ずれている」「写真で初めて気づいた」というレベルのこともあります。

見た目だけの問題ではない理由
斜視で困るのは、見た目のコンプレックスだけではありません。
人間の脳は、右目と左目から届いた映像をうまく重ね合わせ、立体的な世界として認識しています。これを「両眼視」と呼びます。
ところが、視線がずれてしまうと、
- 二つに見える(複視)
- 片方の目の映像を脳が無意識に抑え込んでしまう(抑制)
- 立体感がつかみにくい
といった問題が起こりえます。
特に子どもの場合は、この「脳の発達のタイミング」と「斜視の時期」が重なると、弱視(視力の発達がうまくいかない状態)につながることがあるため、早めの対応が大切になります。
斜視の主な原因|「目」だけでなく「脳」「生活習慣」も関係する
斜視の原因は一つではなく、いくつかの要素が組み合わさっていることが多いです。
ここでは、代表的な原因を大きくわけてお伝えします。
1. 目を動かす筋肉や神経のバランスの問題
眼球は、眼の周りについているいくつかの筋肉(外直筋・内直筋・上下直筋・斜筋など)がちょうどよく引っ張り合うことで、狙った方向を向けるようになっています。
この筋肉の力のバランスが崩れたり、筋肉に命令を出す神経に異常があると、片方だけが強すぎたり、弱すぎたりして、眼球の位置がずれてしまいます。
先天的(生まれつき)の要因もあれば、脳や神経の病気、外傷、手術の影響などが関係することもあります。
大人になって急に斜視が出てきた場合は、こうした神経・筋肉系の問題を慎重に調べる必要が出てきます。
2. 屈折異常(遠視・近視・乱視)によるもの
一見「視線のずれ」と「ピントの合い方」は別の問題に思えますが、遠視や左右の度数差などが斜視と深く関わることがあります。
代表的なのが「調節性内斜視」と呼ばれるタイプです。
遠視の子どもは、遠くを見るときも近くを見るときも、ピントを合わせるために目のピント調節(毛様体筋の働き)をたくさん使います。
このとき、調節と連動して「目を内側に寄せる動き(輻輳)」も強く働くため、結果として内斜視が現れます。
また、左右で度数が大きく違う「不同視」があると、片方の目だけぼやけた状態になり、脳がその目からの情報をあまり使わないようになってしまうことがあります。
その結果として、あまり使われない目が斜視になっていくパターンもあります。
3. スマホ・PCなど近業の影響(特に大人の斜視)
近年話題になっているのが、「スマートフォンの長時間使用などがきっかけで、大人になってから斜視症状が出てくるケース」です。
四六時中、顔の近くでスマホ画面を凝視することで、目を寄せる筋肉(輻輳)やピント調節の負担が大きくなり、バランスが崩れると考えられています。
もちろん、スマホがすべての原因というわけではありません。
ただ、すでに斜視の素因を持っていた人にとって、スマホ・PC・ゲームなどの「近くを見続ける生活スタイル」が後押しし、症状として表に出ることは十分にありえます。
4. その他の全身疾患や脳の病気
- 脳血管障害(脳梗塞・脳出血)
- 脳腫瘍
- 頭部外傷
- 甲状腺眼症などの全身疾患
といった病気が背景にあり、その一症状として斜視が出ることもあります。
特に「大人になって急に斜視になった」「ものが急に二重に見えるようになった」「頭痛・しびれなど他の症状もある」といった場合は、単なる“目のずれ”として自己判断せず、早急な検査が重要です。
斜視の直し方|子どもと大人で考え方が違う
ここからは、多くの方が気になっている「具体的にどう治すのか?」についてお話しします。
大きなポイントは、「子どもの斜視」と「大人の斜視」が同じではないということです。
子どもの斜視の基本方針
子どもの斜視では、
- 正しく見えるようにする(視力の発達を守る)
- 両眼で見る力を育てる(両眼視機能)
- 必要に応じて眼位(眼球の位置)を整える
という順番・組み合わせで考えることが多いです。
1. メガネ・コンタクトレンズで屈折異常を矯正
遠視や不同視が原因となっている内斜視などでは、まずは適切な度数のメガネ(またはコンタクト)で屈折異常をしっかり矯正します。
これだけで、目を寄せる負担が減り、斜視がかなり改善するケースも少なくありません。
特に調節性内斜視では、「メガネをかけているときはほぼまっすぐに見える」ということも多く、早期に正しい眼鏡をかけ始めることが、その後の視力・両眼視の発達に大きく影響します。
2. 弱視があれば「遮閉法」などで視力アップを目指す
「斜視のある方の目の視力が十分に育っていない」場合は、弱視治療も同時に行います。
よく行われるのが「遮閉法(しゃへいほう)」です。
- 斜視でない側(よく見える側)の目を眼帯・アイパッチなどで一時的に隠す
- 斜視眼に、その目に合った度数のメガネをかける
- 日常生活や訓練の中で、あえて斜視眼を使うようにする
こうすることで、脳が「今までサボっていた方の目」の情報をきちんと処理するようになり、視力の発達を促します。
これは主に幼児~小学生くらいまでの「視力発達の時期」に効果が期待できる方法です。
3. 両眼視機能訓練(ビジョントレーニング)
大型弱視鏡やカイロスコープなどの専用機器、あるいはプリズムなどを利用して、「両目で同じものを見る」「少しずれた像を一つとして認識する」といった訓練を行うことがあります。
これによって、脳側の「両眼でうまく情報を統合する力」を鍛えていきます。
家庭でもできる簡単なビジョントレーニングが紹介されることもありますが、「独学で何とかする」のではなく、必ず眼科(できれば斜視・弱視の専門外来)の方針に沿って行うことが大切です。
4. 手術による眼位の調整
メガネや訓練だけでは眼球の位置のずれが大きい場合、あるいは見た目のずれが生活上大きな問題になる場合には、手術が検討されます。
手術の目的は、「眼球の位置をできるだけまっすぐに近づけること」です。
代表的な手技として、
- 後転術:引っ張りすぎている筋肉を、眼球の後ろ側にずらして付け替え、作用を弱める
- 前転術・短縮術:弱くなっている筋肉を短くしたり前側に付け替えたりして、作用を強める
といった方法があります。
乳幼児では全身麻酔、大人では局所麻酔や全身麻酔など、年齢や状態によって方法が選ばれます。
「手術で一度まっすぐにすれば一生安泰」とは限らず、成長に伴って再度ずれが目立ってきたり、複数回の手術が必要になるケースもあります。
それでも、見た目の改善だけでなく、両眼視の獲得・維持のために手術が大きな役割を果たすことは多いです。

大人の斜視の基本方針
大人の斜視では、「見た目の改善」と「複視(ものが二重に見える)対策」が主な目的になります。
すでに視力や両眼視が完成しているので、子どものように「視力発達のやり直し」を期待することは難しい一方で、生活の質を大きく改善できるケースもあります。
1. メガネ(プリズム眼鏡)でずれを補正
軽度の斜視や、複視のずれが比較的小さい場合には、「プリズム眼鏡」が用いられることがあります。
プリズムとは、光を屈折させることで、実際よりも「像が少しずれた位置に見えるようにする仕組み」です。
斜視で視線がずれていても、プリズムで光の進路を変えることで、「脳が見ている位置」を調整し、両目で同じ対象を見ているように感じさせることができます。
これにより、複視が軽減・解消し、日常生活の不便さを減らせることがあります。
ただし、ずれが大きい場合や、角度が一定でない場合には、プリズムだけでは十分に対応できないこともあり、その場合は手術を含めた検討が必要です。
2. 手術による眼位の調整
大人でも、斜視手術は広く行われています。
子どもと同様、眼球を動かす筋肉の位置を前後に調整することで、ずれている眼球の向きをまっすぐに近づけます。
大人の場合は、
- 見た目のコンプレックス解消
- 複視の改善(仕事や運転など生活への支障を減らす)
などが大きな目的になります。
手術後もしばらくはプリズム眼鏡や訓練が必要な場合もあり、「手術すれば全部終わり」というより、トータルな治療計画の一つだと考えるとイメージしやすいと思います。
3. ボツリヌス療法(ボトックス注射)
一部のケースでは、「引っ張りすぎている筋肉」にボツリヌストキシン(いわゆるボトックス)を注射し、その筋肉の働きを一時的に弱めて眼位を調整する方法が行われることがあります。
効果は数か月程度で少しずつ薄れていくため、繰り返しの治療が必要になる場合もありますが、手術に踏み切る前段階として試すこともあります。
自分でできる「斜視の直し方」はある?セルフケアの現実
ここまで読むと、「結局、医療的な治療しかないの?」と思われたかもしれません。
ここでは、よくある疑問に絞って整理します。
Q1. 目の体操やトレーニングで斜視は治る?
インターネットやSNSには、「この目の体操だけで斜視が治った」「1日5分のトレーニングでOK」といった情報が少なくありません。
しかし医療的な立場から見ると、「すべての斜視が体操だけで改善する」と考えるのは危険です。
- そもそも筋肉・神経の障害や構造的な問題がある
- 角度が大きい
- 子どもの視力発達が関わっている
といった場合、専門的な治療(メガネ・訓練・手術など)が不可欠です。
ただし、眼科医の指示のもとで行う両眼視機能訓練の一環としてのトレーニングは、治療の重要な一部となることがあります。
つまり、「独自のYoutube体操だけでなんとかする」のではなく、「医師の方針の中で、必要なトレーニングを取り入れていく」というスタンスが現実的です。
Q2. スマホやゲームをやめれば治る?
スマホ・ゲームがきっかけになって大人の斜視が目立ってくるケースはあると考えられていますが、「やめれば元通り」という単純な話ではありません。
ただし、
- 近くを長時間見続ける習慣を減らす
- 30分ごとに遠くを眺めて眼を休ませる
- ベッドの中で寝転がった状態でスマホを見続けない
といった「目への負担を減らす生活習慣」は、斜視に限らず、目全体の健康のためにプラスに働きます。
すでに斜視症状がある場合は、生活改善だけに頼るのではなく、必ず眼科で状態を評価してもらうことが大切です。
Q3. 片目を意識的に使えば治る?
「斜視のある方の目を意識して使えば治るのでは?」と考える方も多いですが、自己流で片目を閉じたり、長時間片目を隠したりするのは危険です。
遮閉法やトレーニングは、「どのくらいの時間」「どちらの目を」「どのように」遮閉するかが非常に重要で、やり方によっては逆効果になることさえあります。
特に子どもの場合、誤った遮閉で“よく見えていた側の目”まで弱視になってしまうリスクがあるため、必ず専門家の指導が必要です。
こんな症状があれば、早めに眼科へ
最後に、「どんな状態なら様子見ではなく、眼科を受診した方がいいのか」を整理しておきます。
もしあなたやご家族が以下のような状況に当てはまるなら、できるだけ早めに一度受診してみてください。
- 子どもの視線がいつもどこか合っていないように見える
- 赤ちゃんの写真を撮ると、片方の黒目が外を向いているように見える
- 片方の目を隠すと、とたんに嫌がる・見えにくそうにする
- 最近になって急にものが二重に見えるようになった
- 疲れてくると、片方の目が外れてしまう感じがする
- 頭痛やめまいに加えて、視線のずれを感じる
- 見た目の斜視がコンプレックスになって、写真や人前がつらい
斜視の診断では、視力検査だけでなく、眼位(眼球の位置)・眼球運動・屈折検査などを組み合わせて、総合的に評価していきます。
子どもの場合は、斜視・弱視外来など「小児眼科に力を入れている医療機関」を選ぶと、より細かい説明やトレーニング提案を受けられることが多いです。
この記事を読んでくれたあなたへ
ここまで読み進めてくださったということは、「斜視」について、何らかの不安や疑問を抱えているのだと思います。
もしかすると、「もっと早く知っていれば…」と自分を責めてしまっている方もいるかもしれません。
でも、斜視は「気づいたときがスタートライン」です。
子どもであれば、今からでも視力や両眼視の発達をサポートできる可能性がありますし、大人であっても、メガネやプリズム、手術などで日常生活の不便さや見た目の悩みを軽くできることがあります。
この記事では一般的な考え方をお伝えしましたが、実際の治療方針は「その人の年齢・斜視のタイプ・角度・視力・生活状況」などによって大きく変わります。
「自分のケースではどうなのか?」を知るためにも、ぜひ一度、眼科専門医に相談してみてください。
あなたやご家族の視線が、少しでも楽に、まっすぐに、毎日を見つめられるようになることを、心から願っています。

コメント