「粉もん倒産急増」の現実を知っていますか?

大阪と言えば「粉もん」。
お好み焼き、たこ焼き、焼きそば、明石焼き──どれも関西人の食卓には欠かせない。
けれどいま、その粉もん業界に異変が起きています。ここ1年で、粉もん関連の店舗倒産が急増しているのです。
もしかしたら、あなたの地元にも「あれ、あのたこ焼き屋さん閉店してる…」なんて店が増えていませんか?
この現象、単なる一過性ではなく、構造的な危機が背後にあります。
原材料高騰が止まらない──小麦・ソース・マヨネーズの三重苦
粉もんの命ともいえるのは「粉」。すなわち小麦粉の価格です。
ここ数年、円安や国際情勢の影響で小麦の輸入価格が過去最高レベルにまで上昇しています。業務用の小麦粉は2020年比で約1.6倍以上にもなっており、たこ焼き1個あたりの原価計算も合わなくなっている店が続出しています。
さらに深刻なのが、調味料の値上げラッシュです。
マヨネーズ、ソース、かつお節、青のり──どれもが軒並み高騰。大手メーカーの値上げ発表が相次ぎ、「昔の原価計算はもう通用しない」とため息をつく店主の声も。
「たこ焼きを1舟500円で売っても、ほとんど利益が残らんのや。」
ある大阪市内の個人店主は、そうつぶやきました。
「値上げしたくても、できない」やるせなさ
飲食業において原材料高騰への対処策はシンプルです。価格を上げること。
しかし粉もんの場合、それが難しい。
なぜなら、粉もんは“庶民の味”。
500円を超えると「高い」と感じる人が多く、心理的な価格の壁が存在します。
また、チェーン店やフードコート型の競合が台頭したことで、個人店が価格で勝負できない構造になりました。
結果、値上げもできず、利益率が下がり、じわじわと体力が奪われていくのです。
コロナ禍のダメージから立ち直れないまま
2019年から始まったコロナ禍は、飲食業界に深い傷を残しました。
一時期はテイクアウト需要でたこ焼き屋が盛り返したようにも見えましたが、それは一瞬の追い風。
観光やイベント需要が激減し、地元消費も冷え込んだまま。
「常連さんが戻ってこない」
「お祭りが減って売上も戻らない」
関西を象徴する粉もん文化は、人の笑いや人混みの熱気とともに成り立っていました。けれど、その“場の力”がまだ完全には戻っていないのです。
人手不足で家族経営も限界に
もう一つの問題が人手不足。
若者が飲食業を敬遠し、アルバイトの確保も難しくなっています。
人件費も上昇し、高齢の店主が家族で回していた店は、後継者問題にも直面。
「息子が継ぐと思ってたけど、東京の会社に就職してしもうた。」
──そんな声が、あちこちで聞こえてきます。
粉もん文化の屋台骨を支えてきた個人商店が、静かに看板を下ろしていく。
それが今、関西各地で現実になっています。
SNSで映えない、という新たな脅威
少し意外かもしれませんが、SNS映えの壁も粉もんを苦しめています。
インスタグラムやTikTokでは、カラフルなスイーツや韓国グルメが人気。対して粉もんは「地味」な印象が強く、若年層の投稿率が低い。
この“見せ方の難しさ”が、今の時代における販促の足かせにも。
かつてのように口コミや地元常連の支えだけでは、店舗を維持できない状況になっているのです。
粉もん文化を守る新しい動きも
一方で、希望の光もあります。
最近では、若手経営者や企業が粉もん文化の再興に動き出しています。
- 小麦粉を国産に切り替え、「地産地消」型たこ焼きブランドを立ち上げ
- 老舗がSNS運用を学び、映像で焼きたての音や湯気を発信
- 支援クラウドファンディングで「地域のたこ焼き屋を救おう」プロジェクト始動
こうした動きが少しずつ広がり、粉もん文化の“再ブーム”を仕掛けようとする若者も出始めています。
倒産件数のデータが示す危機
東京商工リサーチの調べによると、2025年の飲食業倒産件数は前年より約25%増加。
その中で粉もん・軽食店が占める割合は実に20%以上を占めました。
たこ焼き専門店やお好み焼き店が倒産・廃業したケースは、過去10年で最多水準です。
しかし注目すべきは、「倒産」よりも「自主廃業」が増えている点。
つまり、資金はまだあるのに、これ以上やっていけないと決断する店主が増えているのです。
これは、単なる経済現象ではなく、地域文化の喪失に直結します。
「粉もん不況」をどう乗り越えるか?
では、私たちは何ができるでしょうか。
答えは意外とシンプルです。
- 地元の粉もん屋に行く。
行列店ばかりでなく、昔からある小さな店を応援する。 - SNSで発信する。
「今日はこの店のお好み焼きを食べた!」と投稿するだけでも価値があります。 - 地域イベントに参加する。
祭りや屋台で粉もんを買うことで、文化を支える輪が広がります。
たこ焼きの一舟、お好み焼きの一枚。
その裏にある想いや努力を、もう一度見つめ直すことが、文化を守る第一歩なのです。
終わりに──「なくして気づく、その温かさ」
昔、放課後に友達と食べたたこ焼き。
家族団らんで囲んだ鉄板の上の焼きそば。
そんな日常の風景の中に、私たちはどこか「安心感」や「郷愁」を感じてきました。
いま、それが失われつつあるとしたら──
本当に惜しいのは“味”ではなく、“つながり”なのかもしれません。
粉もんは、ただの食文化ではなく、人と人をつなぐ象徴。
だからこそ、倒産という言葉の裏にある「声」を拾い上げ、私たち一人ひとりが支え続ける必要があります。
読者のあなたも、今日のお昼はぜひ、あの懐かしいたこ焼き屋さんへ。
一口頬張れば、あの日の思い出がきっとよみがえるはずです。

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