相続放棄をすれば固定資産税を払わなくてよいのか?知らないと損する注意点と正しい手続きの流れ

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豆知識
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相続放棄すれば「税金の請求」も消えると思っていませんか?

higejii(ひげ爺)
higejii(ひげ爺)

「親の実家を相続することになったけど、古くて住む予定もないし、固定資産税が心配だ……。相続放棄をすれば税金も払わなくて済むんじゃないか?」
──こんな疑問、実はとても多いんです。

実際に私のところにも、同じ相談をしてくる読者さんが後を絶ちません。
「相続放棄=すべての負担から解放」と思っている方が多いのですが、法律的にはそう単純ではないのが現実です。

この記事では、相続放棄をしても「固定資産税を払うことになるケース」と「支払わなくてよいケース」の違いを、わかりやすく解説します。
また、手続きの落とし穴や「放棄後に届くはずのないはずの請求書」についても具体的に紹介します。

相続放棄とは?まずは基本の理解から

相続放棄とは、故人(被相続人)の財産に関する一切の権利と義務を放棄することです。
これを家庭裁判所に申述し、受理されることで、「法律上は初めから相続人でなかったこと」になります。

つまり、

  • 財産(不動産・預金など)を受け取らない
  • 負債(借金・税金)も引き継がない

という状態を作ることができるのです。

ここだけ聞くと、「相続放棄さえしてしまえば固定資産税も払わなくて済む」と思いますよね。
でも、実際にはタイミング手続きの方法によっては、税金の請求が残ることがあるのです。

固定資産税は“所有者”に課せられる税金

固定資産税は、土地や建物の所有者に毎年課せられる税金です。
ここで重要なのは、「いつの時点で誰が所有者なのか」という点。

たとえば、相続が発生した時点で、不動産の登記名義は被相続人(亡くなった人)名義のままでも、法的には相続人が所有しているとみなされます。
そのため、相続放棄をする前に課税基準日(毎年1月1日)を迎えてしまうと、その年の固定資産税は、相続人に課せられてしまうのです。

例で見よう:相続放棄しても固定資産税が来るケース

イメージしやすいように、ひとつのケースを見てみましょう。

  • 父が2025年12月10日に亡くなった
  • あなたは相続放棄を2月に行う予定
  • 固定資産税の課税基準日は毎年1月1日

この場合、2026年1月1日には、まだ相続放棄が「受理」されていません。
そのため、税法上ではあなたが父の不動産を所有していると見なされ、2026年度分の固定資産税の請求書が届くことになるのです。

多くの人が「放棄したんだから払わなくていいですよね?」と役所に問い合わせますが、残念ながら役所の立場では「放棄の有無」に関係なく、所有者として名前が上がっている人に課税する義務があるのです。

誰も相続しない不動産の「空白期間」問題

さらに厄介なのが、「相続放棄した人がみんな辞退したケース」。
相続人全員が放棄した場合、不動産は宙に浮いた状態になります。
このとき、誰が管理責任を負うのか税金はどうなるのかという問題が生じます。

実は法律上、相続放棄をしても相続人には「次の管理者が決まるまでの間、一時的な管理義務」があります。
つまり完全に放棄しても、「管理責任が一瞬でも残る」可能性があるのです。

このため、放棄した後に「その期間分の固定資産税」を払うよう求められるケースも稀にあります。

放棄すれば完全に払わなくてよいケース

では逆に、「固定資産税を一切払わなくて済む」ケースはどんなときでしょうか。

  • 相続放棄が期限内(相続開始から3か月以内)に受理されている
  • 放棄後、課税基準日(1月1日)を迎える
  • 登記や役所への通知で、放棄が確認できる状態である

この3つの条件がそろえば、理論上も実務上も固定資産税の納税義務はなくなります
ただし、役所が自動的にそれを把握するわけではないため、放棄後に「家庭裁判所の受理証明書」や「相続放棄申述受理通知書」を添えて、市町村税務課に提出しておくのが安心です。

注意!名義変更せず放置は危険

相続放棄をしても、不動産の登記名義を被相続人名義のまま放置すると、後日トラブルになることがあります。

たとえば:

  • 近隣から「空き家の草木が迷惑」と苦情が来る
  • 行政が「管理責任者」を探して放棄者に連絡してくる
  • 固定資産税の納税通知が再び届く

これらはすべて、「誰が正式な所有者なのか不明なまま」になっていることが原因です。
放棄直後は「もう関係ない」と思っても、後から手続きが追いつかないと、結果的に余計な負担を背負うリスクがあります。

相続放棄後にすべき3つの実務対応

放棄後のトラブルを避けるためには、以下の3つを確実に行いましょう。

  1. 家庭裁判所の「相続放棄受理証明書」を取得する
    → 相続放棄が正式に受理された証拠として役所が確認できます。
  2. 市区町村の税務課へ相続放棄の届出を出す
    → 固定資産税の課税台帳から自分の名前を外すためです。
  3. 他の相続人または法定管理人と連携する
    → 放棄後の管理責任を誰が引き継ぐか明確にしておくことで、後トラブルを防げます。

放棄の手続きでよくある失敗例

  • 家庭裁判所への申述が期限(3か月)を過ぎて無効になった
  • 放棄を申述したが書類不備で受理されなかった
  • 他の相続人が「遺産分割協議」に名前を入れてしまった

こうなると、「放棄したつもりが無効扱い」になり、固定資産税などの納税義務が再発します。
実務では「放棄した気になっていた」方が誤って支払義務を負うトラブルが非常に多いのです。

実際の体験談:放棄したのに通知が来た

私の知り合いのAさん(50代・東京都在住)も、相続放棄をしたにもかかわらず、後から父の土地の固定資産税の納付書が届いたケースがありました。
原因は「役所への通知が遅れていた」こと。

家庭裁判所では放棄が受理されていましたが、市役所の台帳にはその情報が反映されていなかったのです。
税務課からは「放棄書類を提出していただければ取消処理します」と言われ、最終的には払わずに済みました。
このように、放棄が受理された後も手続きの“伝達”を怠らないことが何より重要です。

まとめ:相続放棄=自動で税金免除ではない

ここまで読んでわかる通り、「相続放棄をしたから固定資産税は払わなくてよい」というわけではありません。
ポイントを整理すると──

  • 固定資産税は1月1日時点の所有者に対して課税される
  • 相続放棄がその前に家庭裁判所で受理されていないと、1年分請求が来る
  • 放棄後も税務課への通知登記・管理責任の整理を怠らない
  • 放棄全員辞退のケースでは、一時的管理義務が残る可能性も

相続放棄は「財産も義務も引き継がない」手段ですが、それを現実の税制や行政手続きに反映させるには、正確な知識と行動のタイミングがカギです。

もし迷ったら専門家に相談を

相続放棄のタイミング、書類の書き方、固定資産税の扱いは地域によって異なることがあります。
迷ったら、司法書士や税理士などの専門家に依頼するのが安全です。

特に、不動産の名義変更や登記放置リスクに関しては専門家が最も詳しく、自治体との調整もスムーズです。
相続放棄は一度受理されると取り消せないため、「早めの確認」が何より重要です。


あなたがこれから相続放棄を検討しているなら、
「放棄したあとに、余計な請求がこないように」
この記事で紹介した流れを必ず意識してみてください。

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