
みなさんは、寝ている間に「呼吸が止まる」経験をしたことがありますか。実は、本人が気づかないまま何十回も呼吸が止まり、そのたびに体が必死に酸素を求めて目覚めを繰り返していることがあります。これが「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)」です。
一言でいえば、「眠っているのに体が休まらない病気」。放置すると、脳や心臓に深刻なダメージを与え、最悪の場合、命を落とす可能性すらあります。実際に交通事故や突然死の一因となるケースも報告されています。
あなたも危険?こんなサインに心当たりはありませんか
次の項目のうち、いくつ当てはまりますか?
- 家族に「いびきがうるさい」と言われる
- 寝ている間に「呼吸が止まっていた」と言われた
- 朝起きたときに頭が重い、だるい
- 日中に耐えられない眠気がある
- 夜にトイレへ何度も行く
- 血圧が高い、または薬で治療中
- 肥満気味、首が太いと言われる
一つでも当てはまる人は、すでに軽度の睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。特に肥満や高血圧の人はリスクが高く、「いびき=疲れているだけ」と勘違いして放置するのは非常に危険です。
命を脅かす理由:酸欠がもたらす全身のダメージ
睡眠中に呼吸が止まると、血中の酸素が不足し、体は強制的に「目を覚ます」命令を出します。これが一晩に何十回、何百回も起こると、脳や心臓、血管に大きな負担がかかります。
医学的には、SASが引き起こす可能性のあるリスクは次の通りです。
- 高血圧、心筋梗塞、脳梗塞の発症リスク増加
- 糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームの悪化
- 認知症リスクの上昇
- 交通事故・労災事故の発生率上昇
実際、睡眠時無呼吸症候群を放置していたドライバーが通勤中に居眠り事故を起こした例や、心筋梗塞で急死した例も少なくありません。
病院でどうやって分かる?検査の流れ
「自分も怪しいかも」と思ったら、まずは病院での検査です。耳鼻咽喉科、内科、または睡眠専門クリニックで簡易検査が受けられます。
- 問診:いびきの有無、睡眠時間、生活習慣をチェック
- 簡易検査:自宅でセンサーを装着して一晩測定(酸素濃度や呼吸数など)
- 精密検査(PSG検査):病院で脳波、心電図、呼吸、筋肉の動きを詳しく測定
検査の結果、「無呼吸低呼吸指数(AHI)」が1時間あたり5回以上だと「SAS」と診断されます。
治療法:命を救う「CPAP療法」と生活改善
睡眠時無呼吸症候群の治療は、主に次の三つの方法があります。
- CPAP療法(シーパップ)
鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を広げて呼吸を確保する方法。中等症以上で最も効果的で、使用翌日から眠気が改善する例も多数あります。 - マウスピース療法
軽症の場合に有効。歯科で作成する専用装置を装着して舌の落ち込みを防ぎ、気道を確保します。 - 生活習慣の改善
体重を減らす、禁酒・禁煙、仰向けで寝ないようにする、といった対策も有効です。特に肥満に伴うSASは、減量が大きな改善ポイントになります。
体験談:CPAPで人生が変わった話
ある50代の男性は、毎日昼間に眠気が強く、会議中にうたた寝していたと言います。奥さんに「寝ているとき呼吸止まってた」と言われ調べた結果、重度のSASでした。
CPAP療法を始めたところ、1週間で朝の頭痛が消え、1か月後には体調が劇的に改善。血圧も下がり、集中力が戻ったそうです。
医師の話でも、「治療を始めた患者の多くが、別人のように生き生きする」と語られています。それほど、睡眠の質が健康に直結しているのです。
放置しないで!自分でもできるSAS対策
病院へ行く前に、自分でできることもあります。
- 枕の高さを見直す(高すぎないように)
- 寝る前の飲酒を控える
- 鼻づまりを治す
- 減量を目指す
- 仰向けではなく横向きに寝る
最近では、スマートウォッチやアプリでも「いびき・無呼吸」を検知できる製品が増えています。気になる場合は、自宅でのセルフチェックから始めてみるのも良いでしょう。
睡眠時無呼吸症候群は「珍しくない病気」
日本では成人男性の約3〜4%、女性の約2%がSASと言われています。40歳を過ぎるとその割合は急増し、肥満や閉経後の女性、糖尿病患者ではさらに高率になります。
つまり、「自分は大丈夫」と言えないほど、SASは誰にでも起こりうる生活習慣病の一つなのです。
命を守る第一歩は「気づくこと」
SASは、誰かに指摘されるまで気づかない人が多い病気です。しかし、放置すれば命を縮めかねません。
「ただのいびき」と軽視せず、少しでも異変を感じたら医療機関に相談してみてください。早期の発見と治療で、多くの人が元気な生活を取り戻しています。
命を削るほどの睡眠不足に、もう終止符を打ちましょう。
「たかがいびき」「ちょっと疲れてるだけ」で片づけず、今日からできる対策を始めてください。
あなたの今日の一歩が、10年後の命を守ります。


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